第23話 いつもと違う、雰囲気
クララとライリーが無事に妖魔退治から帰還した次の日の朝。生徒会室では、シェイラがなかなかやってこないことを良いことにとある噂が流れ始めていた。
「シェイラ様、昨日かなりお疲れの様子でしたよね」
「そうだな。なんだか辛そうな顔をしていた」
「やっぱり、妹が出来損ないだと疲れるんだろうか」
今日はまだ、ライリーもこの場に来ていない。そのせいもあってかクララの本心を知るものは誰もおらず、余計に噂話が流れやすい状態になってしまっている。
この話は、更に発展していく。
「やっぱり、シェイラ様の不調はあの
「そうだ、そうに違いない! 生徒会のこれからのためにも、あいつには何か罰を与えねばならないな」
「それならば、私めに良い案がございます」
罰を与えるべきと発言した副会長に助言をした書記の女性。彼女はカータ・リリス。この国の中でもかなり力を持つリリス公爵家の一人娘。
落ちこぼれという噂が立っているのにもかかわらず王女でいられるクララがちょっと気に食わないようで、前々からよく意地悪をしていた。
「……良い案?」
「はい。それは……」
副会長だけに聞こえるよう、声を潜めて話すカータ。副会長は、その内容を全て聞き終わると、小刻みに頷いてから不気味な笑顔を浮かべた。
「それは良い考えだ。よし、シェイラ様とあとあの留学生にバレないよう、この計画を進めるぞ」
「「「はい!」」」
ヒドい計画を進めようとしているのにもかかわらず、この生徒会室には驚くほど元気の良い声が響いたのであった——。
***
そして、同じ日の放課後。
クララは、期末テストに向けて学園の図書室で勉強を始めていた。
(静かで家よりも資料が揃っているのは良いけれど、やっぱり視線がうっとうしいわね……。たまには放っておいて欲しいわ)
なんだかチクチクとした視線が突き刺さる。クララは、気にしないようにするためにも本で顔を隠してしまった。
そんな中、誰かがクララの隣へとやってくる。
「ここ、座っても大丈夫ですか?」
「え? は、はい……。って、ライリー様!?」
図書館であることも考慮して静かめに驚くクララ。しかし、それでも声が大きかったようで、ライリーは口元に人差し指を持ってきた。
『なんで図書室でまであなたがここにいるのよ?』
『良いじゃん、別に。クララ様を見つけたから、学年2位の実力にあやかろうかな、って思って』
『そんなことのために思念通話魔法で話しかけないでちょうだい。それに、あなたは学年1位でしょう?』
『そんなことって……。思念通話魔法を始めたのはクララ様だよ?』
『……』
話しているような素振りは見せないが、確かに会話をしているこの二人。一応の配慮で思念通話魔法の会話をしているつもりだが、そのせいで余計に勉強に集中することができなくなってしまった。
はぁ、とため息をついたクララは、読んでいた参考書をパタンと閉じる。
『あれ? クララ様、勉強終わりにするの?』
『だ、誰のせいだと思っているのよ……』
少しの怒りとあきれた感情が交じった表情をライリーに向けるクララ。一方で、ライリーの方はキョトンとしている。
『……もう、良いわ。それで? あなたがここに来たということは、何か伝えたいことがあるんじゃないの?』
『さっすがクララ様。大正解! ちょっと付き合って欲しいところがあるんだけど、来てもらってもいい?』
満面の笑みを浮かべながらライリーは答える。逆にクララは疑いの目を向けた。
『……どこへ?』
『俺の家へ』
『は、はぁ?』
『まぁ、とにかく来てよ』
『……分かったわよ』
不承不承ながら了承したクララ。ライリーは更にうれしそうな顔になる。
『やった! じゃあ、靴箱の前で待ってるから。早く来てねー!』
そう言い残して去って行くライリー。
(あれは、何?)
いつもと違う雰囲気のライリーに、ついついクララは腰を抜かしそうになってしまった。
つづく
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