第22話 二度目の戦い②

 今回やってきたのは学園から歩いて少ししたところにある原っぱ。


 いつもなら静かで穏やかな雰囲気が漂っている場所なのだが、今日は違っている。


「うわ、こんなにいるの?」

「まぁ、それでA組の人たちが退避してきたんだから……。それなりにいるでしょ」


 ざっと見ただけでも50は超えていそうな数の妖魔に気味の悪い表情を浮かべているクララ。


 ライリーも数の多さに圧倒されつつ、困ったような表情を浮かべて頭の先をポリポリとかいた。


「しょうがない、人が来る前にやりますか」

「うん。早く片付けて帰ろう、クララ様」

「えぇ」


 表情と空気がガラリと変わる。真剣な目をお互いに向けると、一度頷き合ってから前へと飛び出す。


 風を切って進む二人の姿は、誰もがかっこいいと思ってしまいそうな程素敵で気合いに満ちている。


『今回は数が多いから、大型魔法でなんとかできないかしら!?』

『じゃあ、俺が妖魔の気を引きつけておくから、そのうちに魔力のチャージを』

『了解!』


 妖魔に会話を聞き取り理解する能力が無いのは分かっている二人だが、念のため思念通話魔法で会話をする。


 目配せし合うと二人は別の方向へと走っていく。クララが左、ライリーが右という具合だ。


 走りながらも手のひらに魔力を込めるライリー。


(光魔法でこっちに気を引きつける!)


 しばらくしてライリーが思いきり腕を振り上げると、「バン!」という爆発音のようなものと共にまぶしい光が発される。


 一瞬ひるんだ妖魔。すぐに活動を開始するが、ライリーの思惑通りほぼ全ての妖魔がライリーの方へと進路を取る。


「そうです! お前たちの相手は俺ですよ!」


 クララのことを信じて笑顔で戦っているライリー。すぐ目の前まで近寄ってきた妖魔以外は倒さず、できるだけクララから距離をとれるように走り続けていた。


(よし、視線がライリー様に集まった!)


 妖魔がライリーに寄っていくのを確認したクララ。もう少しだけ妖魔たちから距離を取ると、あまり大きな音を立てないように立ち止まる。


「魔法陣展開。魔力チャージ、開始」


 妖魔に気づかれないよう、できるだけ小さな声で言うクララ。


 黄色の魔法陣が展開されると、クララは腕を振り上げる。振り上げた手は頭の上に。その手のひらの先に少しずつ大きくなっていく黄色の球体ができてくる。


(クララ様、無事にチャージに入ったんだ!)


 順調に作戦がいっているようでうれしくなったライリーはニカッと笑いながら割と距離が開いていることを確認し、クルッと後ろを向く。


「捕縛魔法!」

「!?」


 密集してライリーのことを追っていた妖魔たちは、不意に網のようなものがかかってきたことに驚いたよう。


 一方のライリーは、無事余すことなく捕縛魔法を妖魔にかけられたことに満足したような表情をしながらその場から離れていく。クララの大型魔法に巻き込まれないようにするためだ。


 そんな間にもクララの球体はどんどん大きくなっていく。今ではもうクララの身長の三分の二程の直径の球体ができていた。


「……チャージ完了! いくわよ! 光の閃光ライトニングシャワー!」


 思いっきり腕を振り下ろすクララ。それと同時にクララの頭上にあった大きな球は妖魔のいる方向へとすごい勢いで飛んでいく。


 やがて妖魔の頭上にやってくると、勢いはそのままでいくつかの光のシャワーのようなものが妖魔に突き刺さる。


 そのシャワーが降り終わると、今度は残っていた大きな球体の方が妖魔立ちにぶつかり、爆発する。


「クララ様!」


 いつもと違って大型魔法を使ったため、息切れをしているクララ。そんなクララの元へライリーが駆けつけてくる。


「妖魔の様子はどう?」

「俺が目視した限りでは全部殲滅した」

「そう。良かった〜」


 ホッと胸をなで下ろすクララ。今回も、クララたちの勝利に終わったのだ。


「妖魔がほぼ灰みたいな状態になってる。これなら、後処理も必要ないね」

「そうね。さ、早く帰りましょう。ライリー様。私、もう疲れたわ」


 肩を回すクララ。そんなクララの言葉に、ライリーも頷く。


「うん。帰ろう。上にはクララ様のむちゃくちゃすごい威力の魔法で殲滅してきました、って言っておくから」

「な、なんでよ! 私の名前は伏せて報告してちょうだい!」

「え〜、どうしようかな〜」

「ら、ライリー様!?」


 最近の仲良し度が上がってきて、団結力も上がってきた二人は、ニコニコ笑顔で帰って行ったのであった——。


                              つづく

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