第21話 二度目の戦い①

 校舎内に鐘の音が響き渡る。現在は最後の授業も終え、帰りの挨拶をしているところだ。


 そう、この鐘の音は帰りの時間を告げるチャイム。挨拶が終わると、クラスメイトたちは颯爽と教室を出て行く。


「さようなら、クララ様」

「えぇ。また明日!」


 朝、我慢ができなくなったクララが怒りを爆発させたことにより、馬鹿にされるような態度も、罵声も、教室の中では聞こえない。それどころか、話しかけてくれる人まで現れていた。


 友達と言える関係には慣れそうもないが、これだけ状況が一変したことにクララは内心うれしく思っていた。


「たまには反発するのも悪くないのかもしれないわね」


 今回の出来事は、クララにとっても今後の参考にできるものであったらしい。


 教室内での学園生活をのびのびと過ごすことができそうで、ホッとしているクララ。


 そんな思考を繰り広げていると、いつの間にか教室にはクララしか残っていない状態となってしまっていた。


「よし。私も帰ろう」


 クララは、立ち上がるとドアの方へと歩いていく。しかし、ドアを通り抜けようとしたとき、何者かにぶつかってしまった。


「いたた……。前もこんな展開あった気がする……」

「クララ様! 大丈夫だった!?」


 頭を押さえながらクララが顔を上げると、そこにはライリーが立っていた。なんだか、こちらも見たことのあるような展開だ。


「ら、ライリー様。えぇ、だいたい大丈夫よ」

「良かった。俺、ちょうどクララ様を呼びに来たんだよ」

「……私を?」

「はい」


 笑顔で頷くライリー。しかしクララは、なぜ自分が呼び出されようとしているのかが分からず、首をかしげている。


 そこまで考えていたというように笑顔を揺らがすことのないライリー。そのまま話を続ける。


「今回呼びに来たのは、他でもない妖魔のことについてなんだけど……」

「え、また?」

「はい、また、妖魔が現れたみたいなんだ」


 あまり時間が経っていないように感じられるのに、自分に話が回ってきていることにあきれるクララ。


 そんなクララを見ながらも、ライリーは話を先に進める。


「一度、A組のメンバー数人で行ったそうなのですが、いつもより数が多く撤退してきたみたいで。だから、俺たちに話が回ってきた」

「はぁ、それでなんで更に人数の少ない私たちに話が回ってくるのよ」

「さぁ。それはよく分からない。自分たちで対処したくないだけじゃない?」


 今度は、ライリーまでも首をかしげる。二人とも強いと認められた上で頼られているということが分からないのだろうか。


「生徒会で対処するという案も出ていたんだけど、肝心のシェイラ様が疲れているご様子だったから、生徒会での対処はやめることにしたよ」

「姉様、疲れてたの……?」

「うん」


 真顔のまま頷くライリー。自分の知らないうちにシェイラが疲れているらしいのは少しだけ気になったクララ。


 ライリーから呼び出された理由など忘れて、思索にふけり始めてしまった。


「……クララ様? 話、聞いてる?」

「え? え、えぇ」


 ライリーの呼びかけに、思索をやめるクララ。思索のために下に向けていた視線をライリーの方に向ける。


「で、やっぱり倒さなきゃいけないから、一緒に退治をしに行ってくれるとありがたいんだけど……。それに、妖魔の研究にもなるし」


 ライリーに言われてもいまいち気が乗らないクララ。しばらく嫌そうな顔をしながら考えると、諦めたように顔を上げた。


「……そうね。姉様のためにもなるのだったら、やるわ。どうせ魔法を妖魔にぶつけまくれば良いんでしょう?」

「うん! さすがクララ様。頼りになるな〜!」


 とびきりの笑顔を浮かべたライリー。それを見たクララは少しだけ不快な表情をした。


「何? ライリー様。おだてても何も出ないわよ?」

「ちぇっ。何かくれないかなって思ったのに」

「人生そんな簡単に思い通りにはいかないのよ。それより、早く行くわよ!」

「はーい」


 廊下を勇ましく歩いて行くクララの後ろを、ライリーが駆け足でついてくる。


 ——こうして、二人が出会ってから二度目の戦いが始まろうとしていたのだった。


                              つづく

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