第20話 クララ、怒り心頭に発する
「なんで私がいい点を取っちゃいけないの!? そういうあなたたちの方がインチキじゃない!」
いつも我慢してきたが、とうとう我慢の限界が来てしまったクララ。普段なら押さえられるはずの怒りをクラスメイトにぶつける。
そんな様子はいつも見せていなかったからか、おとなしい性格と見られていたクララ。それ故にクララが怒ったことに引き気味になってしまっているクラスメイトたち。
目を見開いたまま、動けなくなってしまっている。
「いつもいつもいつもそう! 私が反論しないからって、悪口を言いすぎなのよ! 心の中でしか反論できなかった私の気持ちも考えないで!」
もうすぐ始業の時間になりそうだというのに、歯止めがきかない。
先生がやってくるか、クラスメイトたちが反論するかのどちらかがあれば止められそうだが、クラスメイトたちが動けなくなっているし先生も今日に限って遅い。
クララは、心の中で学校での静かな暮らしにさよならをした。
そして、カッと目を見開くと、一歩前に出て、いつもやられているような表情になり、また話を始める。
「何? いつも私に暴言を言っているくせに、言い返されたら出る言葉もないわけ? あなたたち、よっぽど自分に自信が無いのね」
わざと笑ってみたり、上からものを言ってみたり、自分がされていたこと一つ一つをやっていくクララ。
自分でもやり返してしまったら同類だと分かってはいるのだが、どうしても止める気にはなれなくなってしまった。
「私に出来損ないだとかなんだとか言っていたけれど、出来ないのはどちらかしら? 確かに、姉様と比べたら劣っているかもしれない。だけれど、あなたたちよりは出来るわよ?」
さすがにこの言葉には反応する気になったようで、クラスメイトたちが反論してくる。
「なんだと? 俺たちの方が出来損ないだと言いたいのか?」
「えぇ。だって、事実じゃない」
「はぁ? そんな訳無いだろ!」
いらついたクラスメイトの男子が、一人こちらに火でできた球を投げつけてくる。
火魔法の初級のものだ。しかも、クララからしてみれば大分威力が低い。
「
そうつぶやくように言い、魔法を発動させると、投げつけられた火の球を直接つかみ、男子の方へ投げ返した。
「う、うわぁ〜!」
逃げようとする男子。しかし、逃げようとしても火の球は軌道を変えて着いてくる。
クララがコントロールしているのだ。
「す、すげぇ。他者の魔法をコントロールするのって、かなり難しいんじゃなかったか?」
「そうか? 全然覚えてないが」
「いや、確かにコントロールは難しい。それをあれだけ操れているってことは……?」
男子が逃げ回る中、クラスメイトたちの頭の中に信じたくもない考えが浮かんでくる。
その様子を見ていたクララは、ニコッと笑うとクラスメイトたちに話しかけた。
「どうかしら? これで実力の差は実感できた?」
「……」
「あら? まだわかっていないの? なら、今度は……」
「も、もう良い!」
「?」
首をかしげてみるクララ。そのわざとらしい演技が、またクラスメイトたちをイライラさせる。
しかし、今イライラをぶつけてしまえば何をされるか分からないので、しっかりと胸の内に押し込んだ。
「お前がすごいのはよく分かった! 悪かったよ。親が王女だからって甘やかすなよって言っていたのを聞いて、俺たちもやっちまったんだよ」
「本当にすまない。もう、突っかからないようにするから」
「「「「「ごめんなさい!」」」」」
クラスメイトたちは一斉に頭を下げる。それによって、クララは少しだけ機嫌が良くなった。
「まあ、良いわ。もう突っかからないと約束してくれるなら」
クララはクラスメイトに微笑みかける。その笑顔を見て、やっとクラスメイトたちはホッとした。
——一人を除いて。
「お前ら、勝手に和解すんじゃねぇー! 助けろよーっ!」
そんな男子生徒は、先生が来る直前までクララがコントロールする火の球に追いかけ回されたのであった。
つづく
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