第18話 学園からの評価①
クララが両親からの嫌み攻撃からなんとか回避した日から2日経った。
その2日間は学校がお休みの日だったので、今日がクララにとって倒れて以降初の登校となる。
そのためか、クララはビクビクしながら学校に登校していた。いつもの強気な性格はどこへ行ってしまったのか、クララがいつもより小さく見える。
『あ、クララ様。学校来ても大丈夫なんだね』
体をこわばらせながら歩いていると、いきなり思念通話魔法で話しかけられる。
(この声は……ライリー様?)
周りを見渡してみると、案の定ニコニコしているライリーが後ろを歩いてついてきていた。
『ライリー様? いきなり思念通話魔法をされても、びっくりしてしまうんですけど?』
少し怒った口調で返事をするクララ。すると、ライリーも少しだけイライラしたような口調になった。
『でも、「話しかけるときは思念通話魔法でお願い」って言ってたのはクララ様だよ?』
『何よ。私が悪いって言うの?』
『だってそうじゃん。俺はクララ様の言葉に従っただけ』
そのライリーの言葉に少しカッとなったクララは、後ろを勢いよく振り向くとライリーを軽くにらみつける。
しかし、当のライリーは自分には関係ないような顔をして、その上口笛まで吹いていた。
そんな様子を見てプライド高めで強気なクララがいらつかないはずがない。
「
ライリーから目を離して前を向くと、チラッと右手の指先だけ後ろに向け、自分にしか聞こえない声で呪文を唱える。
影をどのように変えるかはその魔法を使用する者次第で、今回クララは《一部の》影が動かなくなるようにした。
ちなみに、この魔法も上級魔法である。
「げ!
やっと魔法が発動されていたことに気づいたライリー。影があまり動かないことから、
(これ、クララ様がやったよね……)
前にいるはずのクララの方に視線を向けると、何も知らないようなツンとした表情で校舎に入っていこうとするところが見える。
いつもであれば気づけたはずなのだが、今回はあまりクララの方に注意を向けないようにしていたせいか、まんまとクララの魔法に引っかかってしまったのだった。
「クララ様……。怒らせると怖いなぁ……」
校舎に入っていくクララの後ろ姿を見てため息交じりの言葉を吐いてから、魔法の解除を始めるライリーであった。
***
(ライリー様ったら、色々失礼しちゃうわ!)
登校したときの怯えようはなんだったのか、すっかりいつもの調子に戻ったクララは、早足で教室へと向かっていた。
(昨日色々してくれたのはありがたかったけれど、数日経ったらもうあんな態度なの!? あーぁ。父様や母様からライリー様に迷惑がかかったらどうしようとか考えた私がバカだったわ)
いや、いつもの調子どころかその先を行っている。どうやら先程のライリーの態度をまだ根に持っていたようだ。
そんな感じでクララが廊下を歩いていると、想像していた通りにクララの悪口を言う奴はたくさんいた。
しかし、いつもの「落ちこぼれ王女」に「インチキ2番女」が追加されてしまっただけで、普段とあまり変わっていない気がする。
(良かった。あまり変わっていないみたいで)
——そう、廊下では。
クララは廊下での様子がいつもとあまり変わっていないところを見て、少し安心した様子で教室へ入っていく。
このとき、クララは安心の心が芽生えていて想像もしていなかった。
クララは何も知らずに自分の席に座る。しかし。
「痛っ!」
反射で勢いよく椅子から体を離す。今、明らかに痛みという衝撃が体を走った。
混乱する中、椅子の上の様子を確認したクララが見たものは、椅子の上にいくつも並べられた針だった——。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます