第16話 両親の評価①
アイーヌにライリーと一緒に帰ってきていたことを両親に伝えると言われてから10分程度が経過した今も、クララは門の前で立ち尽くしていた。
「ま、まずいことになったわ……!」
ぼそっと、クララがつぶやく。
両親に知られるのであれば、シェイラに迷惑をかけることからは免れることができない。
いつもクララのことをかばおうとしてくれているから、周りからも注意に似た言葉を投げかけられてしまう。——そんなことは、クララが一番よく理解していた。
「対策を練らなくては……!」
クララは、走って自分の部屋に向かう。
部屋のドアの前につくと、蹴り破るかのように勢いよくドアを開けると、バタン、とドアを閉めた。
「今日、父様たちが帰ってくる時間は夕方……。そこまでに言い訳を思いつくことができるのかしら?」
しばらく考えてみて、クララは思いっきり首を横に振る。自分の力だけでは、どうにもできなさそうだ。
(どうしたら良いの……?)
クララは、部屋の中でも立ち尽くし、思考をあれこれと巡らせていた。
***
一方、シェイラはと言うと、何も知らないまま家へと帰ってきた。侍女たちがシェイラのことを出迎える。クララの時とは大違いの反応だ。
「「「お帰りなさいませ。シェイラ様」」」
「ただいま」
天使のような微笑みをうかべるシェイラ。その場にいる誰もが、心を奪われそうになってしまった。
しかし、そんな周りの反応など気にせず部屋へと向かっていくシェイラ。
部屋へと向かっているシェイラから引き離されるまいとついて行く侍女たち。シェイラの荷物持ちをしたり、上着を持ったりと、必要以上のお世話までしている。
そのついでにシェイラとお話をしたい侍女たちはシェイラに終始話しかけている。
「今日の学校はどうでしたか?」
「楽しかったわよ。生徒会の仕事も、無事片付けられたし」
「それはようございました。成績は、どうでしたか?」
「前回と同じよ」
「まぁ! 1番と言うことでございますか! おめでとうございます、シェイラ様!」
かなり大きな声の大きさと大人数の足音のおかげで、屋敷中にその情報が響き渡る。
それはもちろん、クララも同じだ。
(姉様、帰ってきたのね。それにしても、1番だなんてすごいわ)
思考を巡らせながらでは、リアクションのテンションが少しだけ下がっているがそれはどうしようもないことのようだ。
しかし、シェイラの良い報せを聞いたからか、シェイラのとある言葉が思い出される。
『少しは他人ひとの力に頼らないと。クララも、私のことを頼ってくれていいのよ?』
と、言う言葉。少しは頼っても良いのだろうか。そんな考えがよぎる。
(迷惑をかけると分かっているのなら、姉様も先に知っておいた方が良いわよね)
そんな考えに行き着く。
そこからのクララの行動は早かった。シェイラたちが部屋の前を通るタイミングを見計らって、部屋のドアを開ける。
侍女たちに警戒される中、クララは声を張り上げて言った。
「姉様に、相談したいことがあります!」
当然、シェイラのそばにいる侍女たちは良い気分ではない。より警戒心を強めると、クララのことをにらみつける。
しかし、そんな侍女たちのことを制止したのは、他でもないシェイラだった——。
***
そして夕方。城の前に豪華な馬車が到着すると、御者が扉を開ける。中からは、この国の国王であり、クララとシェイラの父、エルリッヒ・ルビー・マレイドと、その妻、セフィーラ・メノウ・マレイドが降りてきた。
「お疲れ様でございます。国王陛下、皇后陛下」
エルリッヒたちの前に立ったのはあのアイーヌ。深々と礼をしている。
「アイーヌか。そなたが前に出てきたと言うことは、クララがまた何かをやらかしたか?」
「はい、恐れながら、クララ様が学院の男子生徒とともに帰宅しているところを目撃いたしました」
顔を上げてアイーヌが言う。すると、エルリッヒとセフィーラの顔が一気に曇った。
「あの子ったら、何を考えているのかしら?」
「一度仕置きをしてやらんといかんな。行くぞ!」
「はい。エルリッヒ様」
ずかずかと入っていくエルリッヒたち。クララの夕食の時間は、前途多難なようであった——。
つづく
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