第13話 心配してくれる人たち

「ん……?」


 恐る恐る目を開いてみるクララ。最初に視界に映ったのは、廊下にあるはずの天井画ではなく、白い天井だった。


(ここは……?)


 とりあえず、体を起き上がらせてみる。かけられていた布団がさっと落ちる。どうやら、ベットに寝かされていたようだった。


(なんで私はここにいるのかしら)


 周りにあるのは、人混みでも貼り紙でもない、机や薬の入った棚、魔法で動く冷蔵庫クーラーボックスなど。


 ここは、医務室だ。


 やっと自分がいる部屋の認識をできたところで、廊下からこちらに向かってくる2人分の足音が聞こえてきた。


「「失礼します」」


 入ってきた2人の声がそろっている。その声は、クララにとって聞き慣れているものだった。


「クララ! 目を覚ましたのね!」


 先程泣いていたのあろう顔で、うれしそうに微笑みながらやってくるシェイラ。そして、隣に立っていたのは——。


「クララ様。調子はどう?」


 クララの相棒、ライリーだ。安心したような微笑みをうかべているライリー。その表情を見て、クララは少しホッとした。


「えぇ。大丈夫みたい。姉様もライリー様も、ありがとう」


 2人をこれ以上心配させないように微笑むクララ。結果を聞いた直後よりは落ち着いてきていた。


「良かった。クララ様、落ち着いているみたいで」

「そうね。倒れたってライリー様から聞いたときはびっくりしちゃったわよ」


 その話を聞いて、心配してくれたのをうれしく思うクララだが、同時に申し訳なくも思ってしまった。


(ちょっとびっくりしたぐらいで倒れちゃあ、ダメね)


 クララは、はぁ、とため息をつくと、笑顔で2人の方に向き直る。


「姉様に、ライリー様。心配させちゃって、ごめんなさい」


 ベットの上に座っている状態のため、深くは頭を下げられないクララは、軽く頭を下げた。


 これでも精一杯のお辞儀であり、クララは感謝の気持ちを伝えようと一生懸命だった。


「いいのよ。少しは他人ひとの力に頼らないと。クララも、私のことを頼ってくれていいのよ?」

「そうだよ。クララ様、頑張りすぎは良くないよ」


 笑顔とともにお小言を言われたクララ。しかし、自分の気持ちがちゃんと伝わっていることが分かって、お小言を言われたことなど気にならないぐらいにうれしかった。


「分かったわ。今度からは、気をつけます」


 大きく頷くクララ。様子を見て、もう大丈夫そうだと分かったシェイラは、クララに向けて可愛さ抜群の笑顔を向ける。


「私、生徒会の仕事の合間に来てるから、そろそろ行くわね。家でまた様子を見に行くわ」

「は、はい! ありがとうございました! 姉様!」


 ドアのところで振り返ると、笑顔で軽く手を振って去って行くシェイラ。その様子が、誰が見ても素敵と思えるものだった。


「さすが姉様ね。素敵だわ」


 すっかり惚れてしまっているクララ。そんなクララを、面白み半分で見ているライリー。ぷっと噴き出してしまう。


「なっ! 何よ!」

「いや、2人とも仲いいんだなって思って」


 笑いながら答えるライリー。それを見て、クララも噴き出してしまった。


「結局クララ様も噴き出してんじゃん」

「これは、あなたにつられて、よ。自分からではないわ」


 頰を膨らませながら答えるクララ。プイッとそっぽを向いてしまう。


 その様子を見て優しく微笑んだライリーは、クララに少しだけ近づく。そして、話しかける。


「じゃあ、俺が家まで送ってくから、準備してもらってもいい?」

「え?」


 口をぽっかりと開けているクララ。驚きすぎて動かない。


「だって、その状態で1人で帰るのは良くないし。だから、送ってく」


 当然のように真顔で話すライリーの態度に、悪く言えないクララ。


 何分かイヤそうな顔をして、渋っていたクララだったが、ライリーがその場から離れてくれそうになかったので、渋々お願いをしたのだった。


                              つづく

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