第6話 協力関係
「
(何でこの人は私に突っかかってくるのかしら!?)
いきなりのライリーの言葉に驚きを隠せないクララ。体が固まってしまって、ライリーをにらみつけることしかできない。とりあえず、クララはこちらの返答を待っているライリーの目をしっかり見る。
「……あなたは……なぜ秘密を教えると仰っているのですか?」
「いや、そっちの秘密を知ったから、こっちの秘密も教えるべきかなと思って……」
ライリーは、頭の上の方をポリポリとかく。他にも何か目的がありそうな様子だ。クララには、微妙に顔が赤く染まっているようにも見える。
「そうですか……」
クララとライリーの間に、少しの沈黙の時間が流れる。
(嘘をついているようにも見えないけど……)
ただ、一つだけ不審な点がある。それは、なぜお互いが自分たちの秘密を共有する必要があるのか。確かに、嘘をついているようには見えないが、目的が分からないと警戒してしまう。
「……分かりました。秘密を教えてください。ただし、あなたの本当の目的も聞かせていただきます」
クララは、にらみつけていた表情を解く。ただ、不信感に満ちた目は隠せていない。
ライリーは、それを見てまたぷっと吹き出す。クララの顔が面白かったようで、少しだけ涙目になっており、赤く染まっていたように見えていた表情の欠片もない。
「……あなたは……面白い人ですね」
「……?」
「あ、いえ。変な意味はありませんよ。……じゃあ、目的とともに私の秘密もお話ししますね」
いつの間にか、ライリーの口調が敬語に変わっている。その上、ライリーはにやりと微笑む。まるで面白い獲物でも見つけたかのような表情だ。
クララは、ライリーのからかってくるような行動に、少しだけむっとする。しかし、わざわざ言葉にして怒る気もわいてこないので、黙って相手の話を聞くことにした。
「俺は……隣国、クライド王国からの留学生で、ステラ公爵家の第二子ということになっていますよね」
ライリーは、一息置いてから話し始める。「ということになっている」という言い回しが少しだけ気になるが、聞いた情報とライリーの言ったそれと一致しているので、クララは大きく頷いた。
「えぇ」
「それ、実は嘘なんです。実際には、ステラ公爵家なんて存在していません」
「……!?」
「俺は……クライド王国第二王子、ライリー・スレア・クライドです」
それは、衝撃的な内容だった。クララは、驚いて体が固まってしまう。声だって出せなくなっているし、目をこれでもかと大きく開き、口をあんぐりと開けている。——本当に王子様だったのか。
だって、第二王子が留学してきているなんて思いもしなかった。確かに、ライリーという名はクライド王国第二王子の名と一致している。なぜ、気づかなかったのだろう。
そんな動けなくなってしまったクララの手をとり、ぎゅっと握るライリー。のぞき込むようにしてライリーはクララと目を合わせる。
「ここからが、あなたに話しかけた目的です。私は、この世界に多くの危険をもたらす、妖魔から守る対策を講じるため。そのためには、あなたのような強い魔力の持ち主が必要なのです。どうか……力を貸してください」
妖魔。——それは、人々が魔法を使ったことで出来た、空気中に漂っている魔力を吸収して活動する、魔物のような存在だ。普段は山の奥にやってくる魔力を吸収して生活している。
しかし最近になって、妖魔は人間を襲うようになった。その原因は分かっていない。ただ、妖魔たちは魔力を持つ人間を積極的にねらっている。しかも、魔力が弱い者がねらわれることが多い。
ライリーは、深々と頭を下げた。最初の態度からは考えられないほどの、きれいなお辞儀。クララはライリーの肩にポン、と手を添える。
「……そういうことなら、協力します」
「……! 本当ですか!?」
「えぇ。ただし、周りには知られないようにすることを条件としますが」
クララは、ニコッと微笑む。クララからの返答がうれしくなって、顔を上げたライリーも、顔をくしゃくしゃにして笑った。
「本当に、ありがとうございます!!」
——こうして、クララとライリーの協力しあう日々が始まったのだった。
つづく
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