第4話 ドナツ帝国について
「うわぁ……相変わらず、すごいねぇ」
ミサキが驚いた様子で周囲を見回す。俺も思わず見回してしまった。
眼の前の道路では、轟音を立てて鉄の塊が何台も走っている。背の高い建物が何棟も立ち並んでいる。
ドナツ帝国。この世界でもっとも繁栄し、豊かな国。
「……何度来ても驚くな。この国は」
少なくとも俺の故郷とはまるで異なる。同じ世界の国というのに、まるで別世界である。
俺とミサキはなるべく目立たないように道を歩く。道行く人に何度か見られるが、俺たちはあまり気にしないようにした。
「えっと……国家会議場ってこっちでいいんだよね?」
「あぁ。大丈夫だ」
ほどなくして、前方に巨大な建物が見えてきた。といっても、その建物も巨大な建物の一つ……といった程度で、その奥にも、隣にも同じ程度の建物がある。
「……ここが、国家会議場のようだな」
「へぇ……前はここには来なかったけど……お城もすごかったけどここもすごいなぁ」
ミサキの言う通り、ドナツ皇帝の居るドナツ城はこの数倍の大きさである。
国の力を示すのが城なのだから、巨大なのは当然なのだが……ジャフテ城の2倍ほどの大きさの建造物は城というより、巨大な化け物という印象だったが。
「……行こう」
俺とミサキは国家会議場に向かっていく。入り口には受付の係が何人か立っている。
俺たちが建物中に入ろうとする何人かが近寄ってきたが、すぐに問題ないという感じで離れていった。
「ふふっ。僕たち有名人だね」
ミサキは嬉しそうだが……おそらく、転移魔法でこの国に来てから、ずっとマークされていたのだろう。
ドナツは豊かな国であると同時に、軍事大国でもある。物量や武器による戦争だけでなく、情報線や諜報機関も一流だと聞く。
俺は十分に警戒しながら、建物の中に入っていく。中に入ると巨大なロビーが広がっていた。
「うわぁ……大きいね」
ミサキが天井を見上げている。なんだか、まるでジャフテとの国力の差を見せつけられているようで段々つらくなってきた。
「あ! 勇者様~!」
と、そんな折に、聞き覚えのある声が聞こえてきたのだった。
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