第23話 ノミニケーション
《三章》
「最近、<少女恋愛>界隈で魔法やら悪役令嬢の主張が激しいじゃん。政略結婚や宮廷要素を捻じ込もうとする勢力が活発じゃん。<ファンタジー>の台頭が、うちらのジャンルを侵食してるじゃん」
ウェヌス氏は、生ビールをグビッと呷った。
「わらわの下僕君が魔法使いなのは、<ファンタジー>ジャンルの余波なのねぇ~」
エロース氏が、赤ワインの芳醇な香りを広げた。
「はあ、大変なんですね……」
フレイヤの代理で、なぜか俺が女神会に出席している。あいつ、友達と台湾カステラ食べに行くってさ。現世を楽しむ暇があるなら、俺を助けなさい。
此度の開催場所は、駅前商店街の赤ちょうちんが目印の居酒屋。
畳のこたつ席には、タコわさ、もつ煮、焼き鳥、おでん皿。そして、空のジョッキが所狭しと転がっている。
「うぇ~い。大体よぉ、うちらは物理法則ちゃんと守った上で物語を紡いでるわけじゃん? なのに、ファンタジーの連中は何でもかんでも魔法で解決とかふざけんなって話じゃん。舞台は現代! 使っていいファンタジー要素はBLパートだけじゃん。ひっく」
「そっすねー」
よく分からないが、俺はテーブルに並ぶ焼き鳥をつまむことにした。
砂肝、ハツ、せせり。チョイスが渋くない?
「はぁ~、何だか暑いわぁ~」
エロース氏は、吐息を漏らしながら身悶えている。
胸元が大胆に開いた浴衣っぽい格好に加え、花魁よろしく肩までおはだけでありんす。
思春期ビンビンな誘惑のはずが、居酒屋の酒とタバコが交ざった臭いで俺はテンションを盛り下げていく。自分、萎え萎えですよ。
「今日は飲むじゃん! ジャンジャン飲むじゃん」
「濡れるわよぉ~」
ギョウカイ神たちが、店員にビールを追加注文。
どうせ、いつも飲んでるだろ。
アルハラを受ける前に、俺は居酒屋を後にした。
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