第18話 不埒者
放課後。
淫靡な特訓は続く。
「んんっ……はぁはぁ……や、やんっ……くふぅっっ!」
「もっと喘いで! そんなんじゃ、興奮しないよっ」
俺は女優にスマホを向けつつ、エロ監督みたいな指示を飛ばしていた。
ねっとりと角度を変えては録画していく。別に俺が個人的趣味に走っているわけではなく、これは杜若さんの羞恥心を引き出し、より一層特訓のパフォーマンスを向上させたりさせなかったり。
うんうん、美人は絵になるじゃなぁ~い。
「でゅふ。良いですぞ、良いですぞ。拙僧、滾りますな」
拙者、ローアングラー隆と申しまする。三度の飯より、女子校生の痴態がご馳走でございまして。カメラの連射機能も駆使してつかまつる候。
「きも」
「殺気っ!」
なかなかどうして、短い言葉で人を切り捨てた。
むろん、辻斬りの藤原なり。
「ふ、藤原がこんな時間まで残ってるなんて珍しいじゃないのかね?」
「忘れ物」
藤原は、俺とソーシャルディスタンスを保ちながら机へ向かった。しれっとマスクを装備する。ぼく、病原菌じゃないよ?
「……っ!」
杜若さんが、カッと目を見開いた。金剛力士像の眼力がフラッシュバックする。
「な、なに?」
プレッシャーに押され、藤原がビクッと後ずさる。
……藤原、気持ちは分かるってばよ。でもアレ、沈痛な面持ちみたいよ?
――藤原さんに絶対おかしな奴と思われました。ショックです……
ほらね? せやろ?
藤原は何かを察したように、深いため息を吐いた。
「どうせ、大原が諸悪の根源でしょ。早く、謝りなさい」
「え?」
「杜若さん。こいつに嫌がらせを受けたのね」
「……っ!」
杜若さんのリアクションを、藤原はイエスと受け取ったようで。
「詳しくは聞かない。きっと、人に知られたくないことでしょ。弱みに付け込むヘンタイは、あたしが始末しとくから」
「ちょ、待てよ! 俺が、人の弱みに付け込むような人間に」
「見える」
レスポンス速いっす。5Gかしら?
「隣の席のよしみで出頭するの付き添ってあげる。感謝しなさい」
「いててっ、耳取れちゃう! 引っ張っちゃダメぇ~」
「……っ!」
杜若さんが手を伸ばすものの、時すでに遅し。
「やぁ~~めてぇ~~~~」
藤原に連行され、俺は教室を退出させられる。
――大原くんに無理やりやらされていません。自主的なトレーニングです!
杜若さん。フォロー、ありがとう。
でもそれ、俺にメッセージ送っても意味ないんじゃよ。
「特訓は順調?」
「まあまあ。俺とは少し、喋ってくれるようになった」
「それじゃあ、もう少しヒロインと距離を詰めましょうか」
「如何に?」
「次回は体育館倉庫で密室ドキドキ大作戦よ」
「お、おう……」
すこぶる心配になってきた。
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