第3話 祝日

 「どうして、こんな目に・・・」

岡島は腫れた顔で言った。足を引き釣りながら一つの場所を目指して進んだ。数時間前、岡島は休日の日課のランニングを開始した。すでに辺りは暗くなっていた。それは、同僚の社員に出会わない為に時間をずらしたからだった。(やっぱり夜は誰もいないな。)岡島は臆病な性格であるにもかかわらず冒険が好きな所があった。(あの道真っ暗で怖そう。どれだけ怖いか気になる。少しだけ行ってみよう。)岡島は外灯の無い小道に入った。(怖い!これはだめだ。早く抜けよう。)その時、何かに躓き、岡島は転んだ。

「いたた・・・」

「痛いのはこっちやで。急にぶつかってきて慰謝料もらわなあかんわ」

岡島は声のした方から離れるように走り出した。しかし、腕を掴まれた。

「おっと、逃げるつもりかいな。」

(しまった。この男はここに長くいて目が慣れてるんだ。)

「お金、置いていってもらうで。」

岡島は抵抗した。その結果、岡島は顔と右足を負傷したが、お金は死守した。全力で走ってその場から逃げた。いつもより遅かったが、男が追って来る気配はなかった。

「どうして、こんな目に・・・」

岡島は腫れた顔で言った。足を引き釣りながら一つの場所を目指して進んだ。そして、人通りのない公園に着いた。

「あった。」

それは公衆トイレだった。個室に入った後、いつもの姿勢になった。(はあ・・・。やっぱりトイレは落ち着く。)その時、岡島は異変を感じた。(ああ・・・。またこれか。頭がおかしくなりそうだけど、特に何もない。気にしない。)

「そこの者」

どこかからささやく声が聞こえた。(声?そんなわけがない。気にしない。気にしない。)

「聞こえてるのであろう?そこの涼やかなる服の者」

岡島は我に返った。

「誰だ!?」

「余は気にするでない。」

「気にする!どこにいる?」

岡島は辺りを見回した。

「見つからぬぞ。余は生きておらぬ。」

「何だって?どういうことだ?」

「余は狭くて籠った場を好む。ここは良い。この星の各地に点在するここはすべて余が侵略した」

岡島は疑問をぶつけた。

「侵略?意味が分からない。トイレはみんなのものだ。」

「ケラケラ。果たしてそうかな?」

すると、空間が歪む感覚は今までにない強さになった。

「あれは、ドリーム社のトイレ、あっちは、あの商業施設のトイレだ。他にもいろんな場所のトイレが連なってる・・・!」

岡島は意識を失った。気づくと、そこはトイレだったが、外で爆発音がした。

「何だ!?」

岡島は気になったが、動くことはできなかった。

「岡島流人。目を覚ますのだ。」

「誰だ?」

「私はミズーリオ。地球を守る星の者だ。」

「地球を守る星?」

「その名は霊界ウルトラ。君に頼みがあった。過去から君の意識が来るのを待っていた。実際の被害を感じてほしいと思って」

「僕に頼み?過去?」

「今は君の時間から見て未来だ。見ての通り、地球の人類はある者によって侵略される。その結果、霊界ウルトラとの戦争になる。しかし、岡島流人、君だけはその未来を変えることができる。」

「僕にそんなことができるとは思えない」

「いいや、できるのだ。君はあらゆる場所と繋がる力を持つ。それはおそらく過去に出会った侵略者の力だろう。中には良い侵略者もいるかもしれない。その侵略者たちの力を借りて、悪い侵略者の活動を阻止してくれ。私は近くで見守っている。では、また会おう。」

「そんな待ってください!」

岡島は意識を取り戻した。そこは人通りのない公園のトイレの中だった。すると、あのささやき声が聞こえた。

「ケラケラ。余の力、思い知ったようじゃのう。」

「確かに凄い力らしい。その力、僕に貸してほしい。」

「何故じゃ。余は外のように広い場は好まぬ。」

「力を貸してくれるなら、ここより狭くて籠った場所をあげる。」

「真か?」

「本当だ。」

「それはどこじゃ?」

「それは、僕の体だ。」

「お主、その言葉に間違いがあればただではすまぬぞ。」

岡島は頷いた。

「口を開けよ。そこより入る。」

岡島は口を開けた。

「行くぞ。」

「うっ。」

その時、異変は収まった。

「変な感じだ。」

(ソレハ余ノセリフゾ。シカシ、ナカナカ悪クナイノウ。ソウイエバ、名ヲ聞イテオラヌ。)

「僕は、岡島流人だ。」

(呼ビニクイノウ。他ニ呼ビ名ハナイノカ?)

「オカルト。」

(オカルト。ソレガ良イ。)

岡島は、自分以外の存在が体の中にいることに気持ち悪さと不思議な心強さを感じた。岡島は、手を洗い、人通りのない公園を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る