第2話 休日
「はあはあ・・・」
岡島は走っていた。休日に家の周辺をランニングすることが岡島の日課だった。向かいからランニングする人がすれ違った。岡島は会釈をしたが、すれ違う人は集中していたのか会釈を返さなかった。岡島は臆病な性格で些細な事でも気にしてしまうところがあり、今起きた出来事を気にした。(なんで会釈を返してくれないんだろう。もしかしてあまりにも僕が失敗ばかりで悪い噂が広まっているのかもしれない。)岡島はポケットから飴を取って袋を破ると口に投げ入れた。(流石に考えすぎか。それにしても、又さんにもらった飴買ってみたけど、美味しいなあ。それに元気も沸いてくる。もう一周だけ走ろう。)岡島は元気になると自分を競技選手に見立てて走ることがあった。(岡島流人選手、最終周に突入しました。ラストスパートをかけます!)岡島はゴール地点であるイチョウ並木の通りに差し掛かった。(走るのは楽しいなあ。この間だけは嫌なこともわすれられる。)その時、向かいからまたランニングする人がすれ違った。岡島は集中していてこの時だけ会釈をしなかった。すると、すれ違った人が止まり、岡島に声をかけた。
「おい。オカルトだろ?なんで会釈してくれないんだよ」
その人は、岡島の同僚で、影で岡島の小言を言っていた社員だった。
「えっと、集中してて・・・」
「本当か?実は俺の事が嫌いで避けてるんじゃないのか?」
「ごめん。急いでいるから行くね」
「おい!つれない奴だ」
岡島は本当に急ぐ必要があった。それは、岡島にとって苦手な社員と休日に出会ってしまったこと、しかもすれ違った時会釈をするのをこの時に限ってしなかったこと、さらに気にしていることを言われたことから腹痛を起こしたからだった。近くにあった商業施設に入るとトイレを探した。その時、岡島は声をかけられた。
「あれ?岡島さんですか?」
見ると、ベビーカーを押す女性だった。
「そうですが、あなたは?」
「私は岡島さんの同僚の又の妻、雛菊と申します。いつも夫がお世話になっています。」
「いえいえ、お世話になっているのは僕の方で」
その時、岡島の腹痛が最高潮に達した。
「すみませんが、僕、急いでいるので失礼します」
トイレを見つけると、超特急で個室に駆けこんだ。
「はあはあ・・・」
岡島は楽しい気分から絶望的な気分に急転直下した。(どうしてよりによってこんな時に・・・。)岡島は用を足した。(ふう。すっきりした。トイレはいいなあ。誰にも会わないし、誰にも邪魔されない。自分だけの空間。ずっとこのままここにいれば何も起きないのに。)その時、岡島は異変を感じた。(まただ!最近増えてる。一体何なんだ。まるで空間が歪むような感覚だ。)その感覚は以前より強く、そして長くなっていた。(これは気のせいじゃないな。おかしい。僕がおかしくなっているのか?トイレから出れば戻るはずだ。)岡島がトイレから出ると、その感覚は消えた。
「一体僕はどうしたんだ」
岡島は歩いて家に帰った。
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