novel.43 初めての感情は何?
そんなこんなで天沢さんのご兄弟を拝見した所で私は夕食を頂き終えた。すると天沢さんのお母様が先にお風呂を進めてくれた。私は天沢さんに「いやいや、天沢さんが先に入って」と進めたが、天沢さんは「いやいや、汐宮先輩もお疲れだろうから、遠慮なく先に入ってくれ」と言ってくれたので、私はそこまで言うなら......と先に頂くことにした。
しかし私はその数分後に驚愕することになる。
「ひ、広い......」
どうやら天沢家は何から何まで広いようだ。リビング、天沢さんの部屋、そうしてそれはお風呂も例に洩れないらしい。お風呂は床がタイルになっている綺麗な作りで、そうして一般的な一軒家のお風呂の面積を遥かに越えている広さだ。果たして大変なお風呂のこだわりがあるのかはどうかはわからないが。すると奥の脱衣所で扉が開く音がした。
「汐宮先輩、着替えを持ってきた。お湯の加減は大丈夫か?」
「あ、うん!大丈夫、ありがとう」
思わずそう返してしまったが、私はまだその驚きを落ち着かせられずにいた。しかしいつまでもそう驚いている訳にもいかない。私はシャワーを出してお湯を加減し、体を洗い始めた。でも、後ろがずっと広いような気がしてなんだか背中がそわそわした。そうして温められた湯船に浸かる。私はそこでやっと一息つけた。
(今日は色々あったな......)
今日は雪城さんに会って、薬真寺先輩に色々教えられて、そうして天沢さんから過去の事を教えてもらった。まだ天沢さんとは関係も深くはないし、私は天沢さんの事をきっと、天沢さんのファンクラブの人よりも知らないと思う。でも、こんな風に知っていけるなら、私はそれでいいと思うのだ。私を頼ってくれているのは嬉しいし、天沢さんのためにできることがあるならやりたいと思う。
(でも、雪城さんって......)
雪城 榊さん。多分同じ歳の人。初めて見たけれど、とても綺麗な人。果たして彼女はどんな人なのだろうか。薬真寺生徒会長から見た雪城さん。そうして中学の先輩で好きな人だった天沢さんから見た雪城さん。色んなこと人から見た色んな雪城さんが存在することはわかっている。じゃあ私は、雪城さんと話をしたら一体どう思うのだろうか?私は雪城さんに一体何を抱くのか……。
(雪城さんもこの家に来て、あの優しいお母さんに挨拶して、可愛いご兄弟を見て、そうしてこの湯船に浸かったのかな)
そう思った時、初めて何故か胸が少しざわざわした。
「……なんだろう、この気持ち」
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