元恋人の転校生、登場!?
novel.30 頼ってほしい心持ち
「久しぶりね、一紀」
綺麗な女子生徒さんは、1週間ぶりに会ったような様子で天沢さんに話しかける。天沢さんは唖然とした様子で彼女を見ていた。反面、私は状況が飲み込めず、天沢さんと女子高生さんを交互に見ていた。すると女子生徒さんが私を見た。まるで品定めするように。
「ふぅん。こんな地味な子が相手なんて、貴方、趣味が相当変わったのね」
その瞬間、私は天沢さんに引き寄せられた。
「わっ、あ、天沢さ......」
「お久しぶりです、雪城先輩。もうあの頃とは違いますから。それに汐宮先輩は地味でも何でもありません。とりあえず今日はお引き取り願えますか」
そう言う天沢さんの手は震えていた。そこで私は天沢さんがこの女子生徒さんを怖がっていることがわかった。久しぶり、という言葉や女子生徒さんの言葉といい、多分天沢さんとこの女子生徒さんは初対面ではない、と考えられる。
「私にそんな口を聞けるようになったなんて、調教しがいがあるわね」
とんでもない言葉が飛び出たような気がしたが、それよりも天沢さんの睨み付ける顔が珍しくて私は唖然としてしまっていた。
「またゆっくり話せるのを楽しみにしているわ、じゃあね」
そう言って女子生徒さんは立ち去っていった。その瞬間に私を抱いていた手の力が一気に抜けた。
「......はああああ~~」
天沢さんは大きなため息をついて私から離れた。
「あ、天沢さん、大丈夫!?」
「ああ、それより汐宮先輩こそ。あの人の言葉なんかを気に病まないでくれ」
「......うん、私は大丈夫。それより天沢さんの方が」
「私は大丈夫だ。でも、何であの人がここにいるのかがそれが謎だ。あの人とは別の高校に進学したはずなのに......」
そう言って考え込む天沢さんに私は手を迷わせながらも、頭にぽん、と手をのせた。
「天沢さん、あの人のこと聞いてもいい?」
「......駄目だ。貴方を巻き込むわけには......」
「私、頼りないかもしれないけど天沢さんの力になりたい」
「......しかし」
「......天沢さん、さっきただの人として扱ってって言ったよね?もし人気者の天沢一紀なら私は何も言わない、でも付き合っている後輩が困ってるなら、私は力になりたい」
そう言って私は、その頭をぽん、と撫でた。
「ここは頼りなさい、一紀、さん」
恥ずかしがりながらもそう言うと、天沢さんはふっと笑い、顔をあげた。
「.....そうだな、そう言われたら頼らない訳にはいかない、聖」
とりあえず、話は生徒会のあとで。そう言って、私達は立ち上がった。
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