novel.18 質疑応答タイム
「も、もう、そんな恥ずかしがらないでよ!天沢さんは皆から言われ慣れてるでしょう?」
黙り込んでしまった天沢さんとの間を埋めるために私は言葉を紡いだ。けれどそんな電話口の向こうで小さく、
「好きな人に言われるのは違うだろ……」
なんて声が聞こえてしまったものだから、こっちまで恥ずかしくなってしまった。
「もう、次!次は天沢さんの番!私もなんでも、は駄目だけど、質問していい?」
そう尋ねると、天沢さんは気を取り直したようで
「ああ、でも駄目なことはない。私も何でも答えよう。そっちの方がフェアだろう?」
と、言ってくれたので、私は意気揚々と紙に書いておいた質問メモを取り出した。
「えっとねー、じゃあ、まずは名前!名前の漢字はなんて書くの?」
「ええ、そんなこと、質問の内にも入らないじゃないか……」
「なんでも答えてくれるんでしょ?」
「仕方ないなぁ。天沢は天の川の天に光沢の沢、漢数字の一に風紀の紀で一紀だ」
「なるほど、それで天沢一紀、ね。すごい、劇団の人みたいな名前だね」
「……本名だよ」
私は言われた通りの漢字を紙にメモして、話を続けようとしたが、天沢さんに遮られた。
「こんな質問でいいならいくらでも答えるぞ、回数はノーカンだ」
「……そう?じゃあもっと質問していい?」
そう言われたらそうするしかない。私は天沢さんに基本プロフィールを尋ねることにした。
「誕生日は?」
「11月5日だ」
「血液型は?」
「Aだ、普通のA」
「好きな食べ物は?」
「基本何でも好きだな。好き嫌いはしたくない派なんだ」
「ということは嫌いな食べ物もない、って事かな。じゃあ好きな教科はある?」
「よく意外と言われるのだが実は数学が好きだ」
「へぇ、それは意外。今聞いたことってファンクラブには公開してるの?」
「あれは非公式だから私が表立って言ったことはないが、まぁ、大体は把握されている」
「それは、流石と言ったところだね……。えっと、じゃあ、あとは、えっとー」
そこで私は行き詰った。天沢さんの言うような「そういう質問」は終わってしまったからだ。あとは、もっとディープな質問しか残っていなかった。
「これぐらいでいいよ。次は天沢さん、さぁ、沢山答えてもらった分、なんでも質問して!」
私がそう言うと、天沢さんは少し考えたような間の後、私に質問した。
「じゃあ一番気になっていたことを聞く。どうして私と付き合ってくれたんだ?」
「……え?」
「あんな強引な告白されて仕方なく付き合った人は、こんなノリノリで脅した相手の電話なんかに出ないだろ。何か他に理由があるんだろ、私と付き合っている理由」
「……それは」
「なんでも答えると言ったな。約束通りなんでも答えてくれ、汐宮先輩」
私は少し考えた後に、その答えを口に出した。
「他に理由と言われても、私は天沢さんに興味が沸いたから、ってだけだよ?あとは天沢さんが私に勧めた百合ラノベの王道シリーズみたいな夢、見せてもらおうと思って」
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