novel.15 夢を見せてよ、王子様

「なんだ、汐宮先輩。貴方に振られた私が別に何をやろうと私の勝手ではないか?」


「いやいや、勝手にも程があるでしょう……!?貴方、本当に私のこと好きなの……?」


「日課である私の日記は、もうほどんど汐宮先輩観察日記のようになっているがな」


「それは愛が重すぎる……」


「とにかく、返していただけないだろうか?返していただけないなら、私と付き合うと承諾してもらうしかないが」


 まずいまずい、どうする、この状況……。今のところこの状況の打開策が「告白を受け入れる」しかない。それ以外に道がない。私は少し考えて、天沢さんのスマホを人質に取ったように胸に抱えて、天沢さんに声をかけた。


「天沢さんは、いつから私のことが好きになってくれたの?」


「入学式だ。と、いううか正式には入学式前の生徒会で集められたときだ。貴方を見て心が動いた」


「……え?そ、それだけ……?」


「恋に落ちるのにそんなに理由が必要なのか?」


「いや、そうじゃないけど……」


「もっと言うなら、貴方が大事にしているその「品行方正」のキャラクターに興味を持ったんだ。貴方はそうしてみんなの前では規律正しい顔をしているのに、時々見せる影を落とすような表情が気になった。みんな高校と言う場所で浮かれて過ごしているのに、あなた1人だけが違う世界にいるようだった」


 正直、驚いた。私は、誰かにそんな風に自分を見られたことがなかったからだ。人間関係なんて浅い付き合いで、私を苦しめるだけの関係だとしか思っていなかった。その素振りすら私は隠してきたつもりだった。なのに、天沢さんは私が隠そうとしてきた私の世界をまんまと覗いてきた。いや、気が付いたんだ。この人は。それでいて私に失望するどころか、好きだなんて言ってくれているんだ。


 私は天沢さんにスマホを突き返した。


「……付き合わない、ということでいいな?ちなみに私は一度振られたら告白した相手から告白されても絶対に断る、というポリシーがあるのでこれが最後のチャンスだったのだが……まぁ、いいか」


 そう言って私から被さるのをやめ、起き上がった天沢さんのネクタイを私は思い切り引っ張った。そうして近くなった距離で、天沢さんに告げた。


「話は最後まで聞くものよ。よろしくお願いします、天沢さん」


 天沢さんは未だ何が起こっているのかわからない、といった表情だった。私はわかってもらえるように続ける。


「貴方が断った時の条件を出していいなら、私も条件を出そうかな。もし、今ここで私を断ったら、昨日生徒会室で天沢さんに押し倒されましたって先生に正式に報告するけれど、どうする?」


 私は続けて言う。


「天沢さん、付き合いましょう。天沢さんが私に勧めた百合ラノベの王道シリーズみたいな夢、見せてくれるんでしょう?」


 どうして急にこんな心変わりを私がしたのか。理由は一つだ。


 俄然、私も天沢さんに興味が沸いただけのことである。







第1章完結です!

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

これからも物語は進んでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします!

面白いと思っていただけたら、是非★評価お願いします!

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