novel.5 なんでここにいるんだ!

「あっ、あ、いや、これは……!!」


「ん?ここにいるってことは好きなんだろう?百合。しかもラノベ」


「いやいや、あの、その、まだ全然読んだりとかはしてなくて、これから読んでいこうかなー、なんて考えてて、あの、何といううか興味本位なだけで、そう言うんではなくて……!」


 私は焦った。非常にまずかった。だって私は品行方正で名の通る生徒会副会長。しかも通っているのは女子高。この趣味がもしみんなにばれたら、私が死守してきた学校でのキャラが崩壊する可能性があった。しかもばれたのは、よりによって学校で一番の影響力と拡散力を持つと思われる天沢さん。もし天沢さんが「この前本屋の百合コーナーで汐宮先輩を見たんだ」なんて口に出したらファンクラブ経緯で多くの人間に私の趣味が暴露されることになる。それだけは避けたい。なんとしても。この17年間、品行方正な優等生で通ってきた私の努力が全て水の泡だ。


「……そうか、まだそこまで読んでいるわけではないのだな。残念だ、同じ趣味を持つもの同士で話せると思ったのに」


「え、え。同じ趣味、あ、うん、確かにそうかも……」


「それならどうだろう、汐宮先輩。良かったら私の勧める百合ラノベをいくつか紹介するが?」


「え、……で、でも、そんな悪いよ。それに私そこまではまり込んでいるわけじゃないし……」


「そうなのか?じゃあこの前図書館で沢山借りていたのは偶然か?」


「……な、なんでそのこと……」


「ん?いや、実は最近私も図書館の百合ラノベを読み返そうとおもっていてだな。ただごっそり借りられていたからら誰か読んでるのかと思ったら、汐宮先輩だっだようだから」


「あ、そうなんだ……」


「やはり百合ラノベはいいよなぁ。私は異世界系にはまってしまっているのだが……、っとまだはまり込んでいない汐宮先輩にこんな話しても迷惑だな。すまない」


「あ、いや……」


 私はここで堪忍した。もう言い逃れることは出来ない。きっとここで偽っても明日の朝には私の趣味は暴露されているだろうから。なら、ここは逆に天沢さんに乗るしかなかった。乗ったうえで方々に言いふらすのはやめてくださいと頼み込むしかなかった。


「あ、私、やっぱり気が変わったかも!天沢さん、おすすめの百合ラノベ、良かったら教えてもらえるかな?少し興味湧いてたんだよね」


「……おお、そうか!だったらおすすめのをいくつか教えよう!」


 そう言った天沢さんが指指す方を私は見た。そうして天沢さんに近づいた時だった。その時天沢さんが私の耳元に近づいた。


「汐宮先輩、少し私と話してほしい」

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