novel.3 百合ラノベとの出会い
先述した通り、私に癒しをくれたのは読書だ。
昼休み、毎日図書室に通い一冊の本を選ぶ。静かな図書室で、窓の近い席を選び優雅に本を開く。開けば本の世界が広がり、私を物語の中へ誘ってくれる。その感覚が好きで、本を好んで読んでいた。ジャンルはなんでもよかった。恋愛、ドラマ、ミステリー、ホラー、童話、辞典。面白くても面白くなくてもなんでもいい。とにかく本が読めればなんでもよかったから。毎日図書室に通っていれば、図書館の本をほぼ読破することは1年で容易かった。そうして私の読破がかかった最後の本棚と言うのが、いわゆるラノベコーナーだった。ラノベ、は聞いたことがあるだけであまり読んだことはなかった。どちらかと言えばマイナージャンル感も感じていたが、読まず嫌いは良くない。そう言う訳で私は棚の一番上の本を適当に手に取った。
本を読むときに、タイトルを確認しないのは私の悪い癖でもありいいところでもあった。ただ適当に取った本。主人公は女の子だ。しかも舞台は女子高。おお、親近感が持てると読み進めていくと、主人公の女の子は学校の王子様的存在の人気者に恋をする。よくある恋愛ものの展開だ。でも、ここで私は少し疑問を抱いて前のページをもう一回読み返した。確かに最初に女子高、と書かれている。じゃあこの学校の王子様的存在の人気者は、おのずと女子生徒ということになる。
女の子が、女の子に、恋?
私は頭で埋まったはてなを解消すべく、司書の先生にその本について尋ねてみた。
「あの、先生。これは一体どういうジャンルですか……?」
「ああ、ついに汐宮さんが手を出したかぁ。これは百合、っていうジャンルで要するに女性同士の恋愛のことを指すのよ」
「ああ、同性愛」
「まぁ、そんな堅苦しいものじゃないけれどね」
よく見たら表紙にも女の子しか書いていなかった。なるほど、世の中にはこんなジャンルもあるのか。世界って言うのはまだまだ知らない事ばかりなんだなぁ……なんて考えて読み進めた。
昼休みが終わる頃、私は先ほどの本棚から5冊ほど本を拝借して借りた。
「うわっ、汐宮さんが本借りるなんて珍しい。読み切れなかったの?って、汐宮さん、顔赤いけれどどうしたの……?」
「先生、この百合ってジャンル、もっと追加してください!」
「え!?」
「面白い、面白すぎます!本を読んでこんなにドキドキしたのは初めてなんです!」
未開拓のジャンルへの感激なのか、それとも同性愛と言うイレギュラーさなのか、私は気が付いたら百合小説のラノベを数冊、手に抱えていた。
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