novel.2 品行方正な副会長

 品行方正。履歴書に書くならきっとそんな言葉が似あうねと言われて、17年間過ごしてきた。小・中・高と生徒会に入り、いつの間にかどこに行っても真面目な優等生だと思われていた。でもまぁ、間違いではないし、私自身そう思われた方が嬉しかったから自然と自分もその優等生に寄せて学校生活を送っていた。周りの人からはつまらない学校生活かもしれないけれど、私は別に満足しているし、これでよかった。


 友達はいない。恋人もいない。特に必要がないから。一人でも学校生活は成立するし、ああいう人との繋がりって面倒くさいと思ってしまうタイプだったから。そんな私の友達は生徒会活動と読書ぐらい。生徒会は楽しい。毎日の積み重ねで副会長にもなれたし、やりがいもある。メンバーもみんないい子ばかりで助かっている。ただ、唯一、少し気になっている子がいた。気にしているといううか、どうしても注目を惹く子。



 天沢あまさわさんという1年の後輩の子。生徒会のメンバーで会計をしている。目を引くのはそこではなく、天沢さんの存在の話だ。天沢さんは私の通う女子高でいわゆると呼ばれるべき存在の人だった。わずか入学して3か月で非公式ファンクラブが出来てしまうほどの人気っぷり。でも特筆すべきはファンクラブ設立より部活での功績。天沢さんは陸上部に所属しておりわずか1年生で、大会出場権を勝ち取った実力者。これは学校ですぐ有名になっていたから部活にも入っていない私でも知っていた。でも逆に言えば、私が天沢さんについて知っているのはこれぐらい。別にファンクラブにも入っていないし、生徒会でも特別仲がいい訳でもないから。気にしているというのは、天沢さんって目立つよね、ぐらいのことで。多分人に言わせてしまえば気にしているほどのことにも入らないのだろうけれど。とにかく、あまり人に興味のない私でも天沢さんの存在は私の目に入るほど目立っていた。


 まぁそんな話はどうでもよくて、とにかく私は生徒会活動が楽しかった。やりがいもあるし、些細だが先輩後輩とのやり取りも楽しい。学校の為に何か貢献できることがあるというのはやはり私の中では割と重要な項目で、学校の楽しみと言ったらそれしかないのだから、私もとんだ生徒会中毒者であることは間違いない。でも、それでもいい。どうせ私の楽しさなんて誰にも分らないのだし、私がやることが人の役に立っているなら、それだけでよかったのだ。品行方正、その名の通りに、人のお手本になるような、そんな私が、きっと私も好きなのだから。


 でもそんな働きっぱなしの私に癒しをくれたのが、読書だったのだ。

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