2-5
《管理センター 1階エントランス》
イベント開催日まであと4日
昨日の打ち合わせが終わったのは夕方だったため、昨晩は近くのホテルで一泊すると、あたしは早朝にエントランスまでやってきた。
「ん〜快適だったわ~、さて今日は挨拶にいくって話だけど」
あたしの役割は対象者の護衛となったので、歌姫本人に挨拶をしに行く予定である。
誰もいないエントランスで待っていると、マークⅡがこちらへと歩いてくる。
「錬様、おはようございます。本日の案内人をさせていただきますので、よろしくお願いします」
「うん、よろしく〜」
「それでは車両までご案内しますので、ついてきてください」
マークⅡと一緒に、車両が停めてあるターミナルへと向かう。エントランスから奥へと歩いていくと、複数の車両が停めてある場所へとでる。
「本日はこちらで、目的地へと向かいますので、ご搭乗ください。私は運転席に乗りますので」
そう言うと、後部座席のドアを開けてくれる。
「ねぇねぇ、後ろの席じゃなくて〜あなたの隣に座りたいんだけど?」
「え……隣ですか?理由をお聞かせくださいますか?」
「だって、隣なら顔見て話できるでしょ?仲良くないたいんだって〜」
マークⅡは少し困惑な表情をするものの、助手席に座る事を了承してもらえたので、そそくさと車両に乗り込む。
マークⅡが運転席に座ると、音声認識でエンジンを始動させ、目的地へと走りはじめた。
都市の景色が小さくなり、ゆっくりと空を走りはじめたところで、あたしはこの子に話かける。
「ねえねえ、あたしの事呼ぶのに、様なんてつけなくていいよ〜」
「え……ですが私のプログラムでは、錬様と呼ぶのが、関係上適切だと判断しーー」
「はは〜ん、じゃあ新たに学習しなさい!あたしを呼ぶ時は錬さんって言って〜」
「わ……わかりました、錬さん」
「ヘヘ〜よろしいよろしい♪」
上機嫌なあたしを見て、不思議そうな表情をしている。まあこの子はアンドロイドだから、理解出来ないのは分からなくもないけどね。
「ところで、マークⅡみたいな子達って、休日とかってあるの?」
「休日ですか?私たちアンドロイドには、そのような概念はインプットされてませんが…」
「もしかしてずっと働いてる感じ!?何にもやる事ない日とかないの??」
「それでしたら……身体にかかった負荷を回復させるために、待機している期間ならございますが」
それを聞いて思うのは、この子達のように人間と同じ感情表現を持つアンドロイドであっても、機械的な扱いしか受けてないって事かしらね。
「錬さんは変わったご質問をされますけど、私達はアンドロイドであり、人ではありませんので」
「あたしは魂がある存在なら、アンドロイドでも関係ないと思うのよね〜。特にマークⅡやティアナみたいに、心があるなら特にね」
「心ですか?」
何やらマークⅡは、深刻な表情で考えはじめたみたいだけど、正直心がなんなのかって答えは、この子達には難しいかもしれない。
「そうね〜。例えるなら、合理的な判断より、こうしたいっ!って気持ちがあって、それを実行した時の気持ちは、心の命令なんだとあたしは思うわ~」
「そうですか……」
「いつか目覚めるんじゃないかしら?まあ、あたしは機械にだって心があると思ってるわ」
ニコっとした笑顔でマークⅡに微笑むと、車両から機械音声が鳴る。
〈ピピッーマモナク目的地ニ到着イタシマス〉
外を見ると、宙に浮いたお城のような立派な建物があった。車両がゆっくりと停車すると、建物の外にはメイドのような人達が数名、出迎えてくれる。
「あら、大きな家に住んでるのね。メイドさんみたいな人もいるし、さすがは歌姫ね。じゃあ行ってくるね〜」
「はい、また後ほどにお迎えにあがりますので」
あたしは車両から降りると、桜家の家へと向かった。
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