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「う〜んと、依頼成功時の報酬は、はずんでもらえるのよね?」


成功報酬が高額という事もあり、あたしはもともとこの仕事を引き受けるつもりであった。まあ、引き受けないと会社がピンチだしね。


「色々と引っかかりますけど、わたくしもこの依頼を引き受けますわ」


あたし達のその言葉を聞くと、インテリ眼鏡は少し安堵した表情をした。


「2人の返事が良いもので助かる。では契約に関する書類に今からサインをして欲しい、話の続きはその後だ」


インテリ女性がマークⅡに合図をすると、あたし達の端末にそれぞれ契約書が送付される。端末に触れると機械音声が流れる。


〈ピピピッ契約書二同意シマスカ?〉


契約書にサインをすると、あたしはコップに残ったコーヒーを飲み干した。


「話の続きをする前に、コーヒーのおかわりを頂けるかしら?ブラックでお願い」

「わかった、すぐ用意させよう」


インテリ女性がポケットから端末をとりだすと、飲み物を持ってくるよう指示をする。


「あら?神谷さんは一般的な端末を使用されるのですわね」

「それはそうさ、都市に在住する者からすれば、君たちが使う端末のほうが珍しいと思うくらいだ」

「そうですのね〜」


会議室の扉が開くと、ティアナがキッチンワゴンを持って部屋に入ってくる。慣れた手付きで3人分の飲み物を用意すると、一礼してすぐ部屋から出ていく。

あたしがコーヒーを一口飲んだ後、インテリ眼鏡はマークⅡに合図をする。会議室内に、何か結界のようなものを作動させる。

ふと時計の画面を見ると、通信エラーの文字が表示されていた。


「これは以前、ここの管理センター宛に送られてきた映像だ。見てほしい」


インテリ眼鏡が端末を操作すると、ホログラム状のディスプレイが出現する。その動画には禍々しく渦を巻いた何かが映っていた


「愚かなる生物共へ告ぐ、我々は自然たる〈災害〉。神を使役し、下等たる生物共に天罰を下す者である」


禍々しく巻いた渦から発するその音声は、機械的なものであり、性別等は判断出来ない。


「生まれながらして平等たる命の権威を害する愚かなる生物共よ、神の意向により、我らが自然たる〈災害〉として、諸君らの愚行を粛清する、心しておくが良い!!」


動画を見終わると、なんとも言えない気持ちになる、正直な感想を言うと、イタズラかな?と思ってしまう。

心情を察したのか、インテリ眼鏡は口をひらく。


「ふざけたイタズラかと、私も見た時はそう思った。だがこれを見てほしい」


インテリ眼鏡が端末を操作すると、おそらく雲の上であろう画像が映し出される。その画像にはドス黒い煙の塊が写っていた。


「この動画が送られてきたとき、この都市の上空に異常なエネルギーを検知した。偵察機を向かわせたのだが、これを撮影したあと、すぐに通信不可になった」

「……質問がありますの、この奇妙な煙は他の都市でも確認されておりますの?」

「いや、これが確認されたのはこの都市の上空だけだ……動画が届いた翌日には、黒い煙がなくなっていた事もあり、他の都市に動きはない」


つまり岡山中央都市の上空でしか確認出来なかった現象だから、他の都市は干渉してこず、知らんぷりってわけね。


「電子はこの状況を、どう考える?」

「そうですわね~、個人的な感情で、誰かさんが何かやろうとしているって思いますわ」


その言葉を聞いて、インテリ眼鏡はクスクスと笑う。


「やはり、君たちに依頼して成果だったよ。管理センター内のお偉いさん方は、万が一の責任問題しか気にしてないからな」

「なるほどね、あたしらを警備に加わえる理由が、なんとなく分かったわ~。それなら報酬が 高額なのも理解できるしね」

「申し訳ないが、そういう事だ。どうか気を悪くしないでほしい」


電子は、え?つまりどういう事?といった表情をしていたので、あたしが説明する。


「つまり、都市に住まう人々や歌姫の身に何かあれば、それは無理やりあたしらのせいにされる。もし動画の犯人を捕まえたら、この都市のお手柄って事よ」

「んま、そういうことですのね!」


話が一段落したところで、マークⅡは結界を消した。このあとは具体的な護衛の役割について話し合い、今日の打ち合わせを終えたのだった。

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