2-3

食事を終え、会議室でコーヒーを飲みながら担当者を待っていた。ちなみに電子はミルクティーを飲んでいる。


「美味しかったわ~」

「そうですわね、特にあのハムたまごは絶品でしたわ」

「電子あればっかり食べてたもんね、あ、口についてるよ」


電子の頬についた玉子の具を指でとると、あたしはペロっと食べる。それを見た電子は、恥ずかしそうに体をクネクネし始める。


「れ、錬…そんな、照れますわ。わたしの口についていた具なんかを…」


相変わらずの反応にあたしはニヤニヤする、電子のモジモジモードが可愛いい。


「コッ…コホン、わたくしとしたことが、うかつでしたわ!今のは見なかったことに!」

「ヤダ」


すると、会議室のドアが開く。眼鏡を掛けたインテリ風の女性と、その付き人らしき子が入って来た。


「待たせてしまって申し訳ない、私が担当者の神谷と言うものだ。来てくれた事に感謝する」


あたしと電子は席を立つと、それぞれ挨拶と自己紹介をする。


「はじめまして、わたくし電子と申しますわ」

「あたしは、白崎です」


自己紹介が終わると、神谷と名乗った女性の隣にいた子が、挨拶をする。


「付き人のマークⅡと申します、打ち合わせの記録等を担当させていただきますので、よろしくお願いします」


パッと見はわからなかったが、彼女の瞳が赤色なのと、名前からしておそらくアンドロイドである事がわかる。

先程のティアナと同じような服装をしているところから、この子も上位モデルなのであろう。

おそらく、神谷と名乗った女性は、管理センター内で位が高いのだろう。


「さて、さっそくだが打ち合わせをしたい。どうぞ座ってくれ」


神谷と名乗った彼女は、あたし達の真向かいの席へと座る。電子とあたしも席に座ると、マークⅡと呼ばれた子が、空間上にホログラムにて、今回の仕事に関する資料を表示した。

インテリ眼鏡が内容を説明し始める。


「まず今回の依頼内容だが、結論から言うとイベント開催中の間、対象者の護衛と会場の警備をお願いしたい」

「この方は……この街の歌姫じゃありませんこと?」


資料を見ると、確かに【桜 このみ】である事がわかる。事前に聞かされていなかったのか、電子はかなり驚いた様子である。


「そうだ、イベントは5日後に開催される、もちろん我々も警備にあたる」


イベントとは、それぞれ各都市が主催して行う祭りのようなものである。

毎年1回そのイベントは開催され、その都市の技術力などを各都市に向けてアピールする意味も兼ねているらしい。

このイベントで歌姫が担う役割は、都市の看板娘として音楽ライブを行い、イベントを盛り上げるといったところだろうか。

ただ、様々な疑問があたしの脳裏をよぎる。


「疑問がありますわ。警備員を数名増やしたところで、何か意味がありまして?」


電子が言っている事はその通りである。あたし達が警備員としてイベント会場に参加したところで、あまり警備力の強化になるとは思えない。

ただその配置場所によっては、多少の効果ならあると考える。


「本来なら確かにその通りだ。ただ今回は、想定外の事態が発生すると思われるため、私は君たちに依頼を出したという事だ」


何か事情があるのだろう。あたしはしばらく黙ったまま、インテリ眼鏡の言葉に耳を傾けた。



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