2-2

ティアナと一緒に、ゆっくりとエレベーターで上へと登ってゆく、目的階は20階である。エレベーターが動きはじめてすぐに、ティアナはあたしに話しかけてきた。


「大変申し訳ございませんが、現在担当者が取り込み中でございまして、少しの間お部屋にて、お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」

「あ、そうなんだ。それならちょっとお腹が空いてきてたから、軽食でも頂けるかしら?」

「はいっ、かしこまりました。それでは後でお持ちいたしますね」


エレベーターからチーンと音が鳴り、20階へ到着する。


「突き当たりのお部屋が会議室でございます。それでは後ほど軽食とお飲み物をお持ちいたしますので」

「案内ありがとう、ヨロシク〜」


あたしはティアナに会釈をすると、突き当たりの部屋まで向かった。部屋のドアが自動で開くと、落ち着いた空間の部屋へと入っていく。

すると、自分の巻き髪を指でクリクリしてる女性が1人、椅子に座っている。チラッと視線を向けられると、懐かしそうに微笑んできた。


「あら、錬じゃありませんこと?久しぶりですわ」

「どうやら先客がいたみたいね、久しぶり〜」


金髪の巻き髪に、いかにもお嬢様っぽい雰囲気の彼女の名前は【光 電子ひかり でんこ

フリーランスの職人で、あたしも時々仕事の依頼をする仲である。


「相変わらずね~、少し髪が伸びたんじゃない?」

「錬こそ、新しいアクセサリーが似合ってますわよ?ホォ~ホッホッホ!」


巻き髪を揺らしながら、お嬢様らしさをアピールするこの笑い方、相変わらず研究されてるな〜と思う。

ふと電子の左手に装着してあるブレスレットに視線がいく。


「あら、電子がつけてるそのブレスレット、新しい端末じゃない〜?」

「さすが観察力がある錬ですわ、わたくしのこれに気付いてしまいましたのね!」


電子は自慢げに、左手に装着したブレスレットを見せてきて、エッヘンと威張る。


「それって大型の車両とかでも転送できる奴だっけ〜?」

「そうですのよ!値段はアレでしたけど、かなり奮発しましたわ〜」

「まあ、でもそりゃ仕方ないよね。羨ましいわ〜」


基本的に物質等を転送させる機能は、端末の性能によって、その大きさや数が決まってくる。あたしら職人は仕事柄よく使うツールなので、転送機能がついたデバイスを身につけるのはごく普通だけど。一般の人はその機能がついてないのがほとんどだ。


「失礼します、軽食とお飲み物をお待ちいたしました」


ティアナがキッチンワゴンを押しながら部屋へと入ってくる。ワゴンの上には、サンドイッチと飲み物が色々置かれていた。それを見た電子の目がキラリッとなる。


「わたくしも頂いてよろしくって?」

「はい、沢山ご用意いたしましたので。どうぞ召し上がりくださいませ」


ティアナが気を利かせてくれたのだろう、二人分の軽食を手際よく準備し、配膳してくれる。


「いただきま〜す」


あたしは担当者を待つ間、久しぶりに会った電子と雑談をしながら、サンドイッチを口に運んだ。

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