1-6
白煙を出しながら落下していく車両は、三階建て程の高さがある建物に激しく激突する。
〈ガガガガン!!!プシューー〉
建物に潜り込むようにして落下した後、瓦礫が崩壊する音が鳴り止む。
激突した衝撃で白煙がさらに激しさを増していき、だんだんと煙が黒く変わっていくのがわかる。
「ヤバイねあれ……人乗ってたの見えたし、助けなきゃー」
激突した建物の周囲から、人々が散るように逃げていく中、あたしは建物へと突っ走る。
「ハァハァ、そこね!」
破損した建物の瓦礫が飛散してくる中、一階まで落下していた車両の位置を確認する。運転席のガラスに亀裂が入っていて、車両のボディは酷く変化していた。
あたしは散乱している瓦礫を掻き分け、車両に近づきドアを開けようとするが、変形した扉はびくともしない。
「うわっ、やっぱ頑丈にできてるねコレ、びくともしないわ」
〈ベキッ、ガラガラガラッー〉
重たい瓦礫音が鳴り、建物の天井が崩れはじめてきた。のんびりしていると、崩壊に巻き込まれてしまいそうになる。あたしは時計に右手を添え、端末を起動させる。
「音声認識システム起動!」
〈ピピッ音声認識システム起動シマスー〉
「コード名"ツチコウ"電動ハンマを転送。アタッチメントタイプ、ブレーカー!」
〈ピッ、転送ヲ開始シマスー〉
機械音声のあとに、ホログラム状に電動ハンマが現れ、実体化する。全長1メートル程の、ランスのような形をした工具が転送されてくる。
すぐさま工具を手に取り、電動ハンマの先端を扉に向ける。
「ドアが開かないなら、壊してしまえばいいわ!」
〈ガガガッーガガガガガガッ!〉
電動ハンマを振り回し、先端が車両の装甲を貫通するまで突きまくる。車両を突くたびに、鈍い振動音が鳴り響く。
「おりゃおりゃー!たやぁぁーー!!」
車両の装甲に、長方形の穴をあける。蜂の巣みたいになったところで、足で思いきり蹴飛ばす。
〈ガコォォン!〉
重たい金属音が響きながら、車両に入っていくための穴が空いた。あたしはすぐさま中に入り、乗っていた人の様子を確認する。
「乗ってる方、無事ですか!?」
車両の前方を確認すると、運転席側には初老の男性が、助手席側には女性が横たわっていたのを見つける。
女性は気を失っているみたいだけど、初老の男性は意識があるようで、わたしの姿を見ると喋りかけてきた。
「お嬢様だけでも……たすけてください…お願い……します……」
「何言ってんのあんた!?ふたりとも助けるに決まってんじゃん!」
「ですが……2人同時には…」
初老はまだ何か喋ろうとしていたが、無視する事にした。とゆうより、ゆっくり話してる場合ではない。あたしは手に持っていた工具を収納する。
「2人同時に運ぶくらい楽勝よ、職人は鍛えかたが違うんだから!それと、外に出るまで何も喋らないで、煙吸うとまずいから」
あたしは意識のない女性を背中に担ぎ、初老をお姫様抱っこすると、車両から外へと出る。先程より煙の量が増えているみたい。
あたしは煙を極力吸わないように、低い姿勢をとりながら、建物の外へと走り出した。
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