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「これ、いいわね〜」


街の中心部に向かう途中、商店街のような場所で、あたしは雑貨屋を見つけたので寄り道をしていた。

色々なアクセサリーが店頭に置かれているこのお店で、黒いリストバンドを手にとり、ツインテールの髪型をしている店長と話をしている。


「へっへっ、お嬢ちゃんなら絶対似合うぜ、男向けのアクセサリーなんだが、嬢ちゃんになら特別に三割引きにするぜ!どうだ!」

「三割引き!?う〜ん、悩むわ〜」

「このリストバンド、何が凄いかっていうとだなー」


店長がリストバンドの機能について説明してくれる。これには小型のバッテリーを搭載しているらしく、カスタマイズ次第では様々な用途に使えるとのこと。例えば照明回路を組み込むと、懐中電灯になるんだとか。


「ふむふむ、なるほど!」


商店街を通る通行人からは、変な視線を感じているものの、あたしは気にせず店長と話し込む。


「それはそうと気になってたんだが、お嬢ちゃんはもしかして技術者かい?」

「そうそう、都市の構外で会社を経営してるのよ~」

「ハッハッハ、やっぱりそうかい!ちょっと待ってなよ!」


店長はその言葉を聞いたあと、ツインテールをピコピコさせながら商品のタグをハサミで切り、あたしに手渡してくれる。


「こいつぁ、俺から嬢ちゃんへのプレゼントだ、ほら持ってきな!」

「えっ店長マジ!?ありがと〜」

「いいってことよ!職人は色々と大変だろうからよ!なに!面白い子と話できて楽しかったぜ、また来てくれよな!」


あたしは店長に笑顔でお礼を言った後、看板に[男♀の店♡]と書かれた場所をあとにする。

店から出て歩きながら、さっそくリストバンドを装着した。


「どんなカスタマイズにしようかな〜♪」


このご時世では、一般的に[肉体労働の仕事=ロボットがやる]といったイメージが強く、職人は綺麗な言葉で技術者と言われている。

逆に悪いイメージを持つ人は、[職人=時代後れがやる底辺の仕事]であると考える人もいる。

そしてあたしみたいな女の職人は非常に珍しく、ロボット技術が進歩したこの時代では、なおさらである。

今では各中央都市に住む人々の職業には、基本的に職人という職業は存在しない。ロボットがやっているというのもあり、職人になる者は皆荒れた街の外へと出ていく。

そういった事情もあり、さっきの店長がサービスしてくれた理由も、昔は技術者だったのだろうと思う。

あの髪型は、まあ考えないでおこうかしら。


店を出てからしばらく歩いた頃、突如上空から爆発音が聞こえてくる、あたしは咄嗟に上空を見上げた。


「あれは………!!」


おそらく車両であろうそれは、白煙を出しながらフラフラと落下していく様子が伺えた。

あたしは考えるより先に、走り始めた。

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