1-5
「これ、いいわね〜」
街の中心部に向かう途中、商店街のような場所で、あたしは雑貨屋を見つけたので寄り道をしていた。
色々なアクセサリーが店頭に置かれているこのお店で、黒いリストバンドを手にとり、ツインテールの髪型をしている店長と話をしている。
「へっへっ、お嬢ちゃんなら絶対似合うぜ、男向けのアクセサリーなんだが、嬢ちゃんになら特別に三割引きにするぜ!どうだ!」
「三割引き!?う〜ん、悩むわ〜」
「このリストバンド、何が凄いかっていうとだなー」
店長がリストバンドの機能について説明してくれる。これには小型のバッテリーを搭載しているらしく、カスタマイズ次第では様々な用途に使えるとのこと。例えば照明回路を組み込むと、懐中電灯になるんだとか。
「ふむふむ、なるほど!」
商店街を通る通行人からは、変な視線を感じているものの、あたしは気にせず店長と話し込む。
「それはそうと気になってたんだが、お嬢ちゃんはもしかして技術者かい?」
「そうそう、都市の構外で会社を経営してるのよ~」
「ハッハッハ、やっぱりそうかい!ちょっと待ってなよ!」
店長はその言葉を聞いたあと、ツインテールをピコピコさせながら商品のタグをハサミで切り、あたしに手渡してくれる。
「こいつぁ、俺から嬢ちゃんへのプレゼントだ、ほら持ってきな!」
「えっ店長マジ!?ありがと〜」
「いいってことよ!職人は色々と大変だろうからよ!なに!面白い子と話できて楽しかったぜ、また来てくれよな!」
あたしは店長に笑顔でお礼を言った後、看板に[男♀の店♡]と書かれた場所をあとにする。
店から出て歩きながら、さっそくリストバンドを装着した。
「どんなカスタマイズにしようかな〜♪」
このご時世では、一般的に[肉体労働の仕事=ロボットがやる]といったイメージが強く、職人は綺麗な言葉で技術者と言われている。
逆に悪いイメージを持つ人は、[職人=時代後れがやる底辺の仕事]であると考える人もいる。
そしてあたしみたいな女の職人は非常に珍しく、ロボット技術が進歩したこの時代では、なおさらである。
今では各中央都市に住む人々の職業には、基本的に職人という職業は存在しない。ロボットがやっているというのもあり、職人になる者は皆荒れた街の外へと出ていく。
そういった事情もあり、さっきの店長がサービスしてくれた理由も、昔は技術者だったのだろうと思う。
あの髪型は、まあ考えないでおこうかしら。
店を出てからしばらく歩いた頃、突如上空から爆発音が聞こえてくる、あたしは咄嗟に上空を見上げた。
「あれは………!!」
おそらく車両であろうそれは、白煙を出しながらフラフラと落下していく様子が伺えた。
あたしは考えるより先に、走り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます