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《管理センター 情報管理室》


私が今いる部屋の正面には、巨大なディスプレイがあり、無数の電子コンピューターが各職員の人数分配置されていて、多数の職員が目の前のモニターを監視している。

この場所は都市中心部の建物地下にあり、この都市のセキュリティをはじめ、様々な情報について管理している場所である。

モニターを監視していた職員が、私に報告をしてくる。


「神谷所長、先ほど都市内を巡回していた警備隊からの報告です。どうやら都市エリア外から街に入ってきた者がいるそうですが、その者の記録を所長に転送いたしますか?」

「……必要ない、今朝警備隊長の岩山から報告を受けている。引き続き警戒にあたってくれ」

「かしこまりました」


神谷かみやと呼ばれた私は、この情報管理室の責任者をやっている。数週間前、このセンターに物騒な予告があったため、各職員に厳重警戒の指示を出している。そのため、情報管理室はいつもより緊迫した雰囲気が漂っている。


「イベントの開催まであと5日……さて、どうしたものか」


私は目の前に映る地図を確認したあと、画面を消して席を立つ。


「私は打ち合わせに行ってくるから、あとは任せる。何かあれば連絡してくれ」

「かしこまりました」


職員一同にそう伝えると、情報管理室の入口横に立っていたアンドロイドに声をかける。


「マークⅡ、行くぞ」

「承知しました」


2人で情報管理室を出ると、エレベーターに向かって歩きはじめ、エントランスを目指す。


「神谷様、外出時の車両を1階ターミナルに用意しておりますが、他に同行させる方はいかがなさいますか?」

「……私とマークⅡの2人でいく、君が居れば問題ない」

「承知しました」


この子の名前はマークⅡ、正式な個体名は【護衛特化型アンドロイド 型式Mark-Ⅱ】である。

人工知能を搭載したロボットの中でも数少ない上位モデルで、感情表現機能を搭載した人型のアンドロイドである。この子には基本的に、私の付き人として行動してもらっている。


「例の女職人への対応はどうなっている?」

「はい、ティアナが対応する手筈になってます」

「そうか、予定通りよろしく頼む」


エレベーターから降りると、エントランスの裏側を通ってターミナルへと向かう。

マークⅡが準備してある箱型の車両へと向かい乗りこむ。私が助手席に座ると、運転席にはマークⅡが座り、エンジンを始動させる。


「音声認識システム起動、登録固体名Mark-Ⅱ」

〈ピピッ登録ライセンスヲ確認。エンジンヲ始動サセマス〉

「オートドライブ起動、目的地はーー」

〈ピピッ目的地ヲ検索完了、コレヨリ自動走行ヘト移リマス〉


マークⅡが音声で指示を出すと、車両はゆっくりと浮き上がり、目的地へと走り始めた。地上にある街の建物が小さくなったところで、私はポケットから端末をとりあえず。

〈ブンッー〉と音が鳴り、資料をホログラムで出すと、私はそれに目を通す。


さくら このみ】

機関名【パピラス】中国支部に所属する歌姫であり、委託契約先は岡山中央都市。

2年前に歌姫としてデビューし、上級国民のライセンスを取得する。

一般国民からの人気は高く、昨年開かれた[中国地区エリアーアイドルコンテスト大会]で2位となる。歌姫となる以前、桜家の娘として生まれた彼女はーー


〈ーピ〉私は資料の途中まで読むと、ホログラムを消し、ため息をつく。その様子を見たマークⅡが声をかけてくる。


「神谷様、表情が少し暗いようですが、どうかなさいましたか?」

「……どうしてかな、まあ必要な情報は理解しているし、何も心配ない」

「そうですか、もし必要がありましたら、なんでも御申し付けください」

「ああ、ありがとう」


私はそう答えたあと、端末を手に持ったまま、外の景色に目を向けた。

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