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この都市の中心部には、都市全域を管理するための施設があり、街のシステムは統括してそこでコントールされる。その建物の全長は90メートルほどあり、都市内にある建物の中でもかなり背が高いため、ここからでもその場所がよく分かる。
あたしは歩きながら街の様子を観察する。街の景観は全体的に発展した感じであり、街を行き交う人々に混じって、活動するロボット達がちらほら目に入る。
・金属でできた四角い形をしていて、何かを配達するロボット
・掃除機のような形をしていて、汚れた部分を掃除してまわるロボット
・動物を模して作られ、人に追従するロボット
様々な形をしたロボットがあるけど、みんなせっせと動いている。ちなみにこの光景は、技術が発達している都市の中だけの話で、街の外で暮らすものは、ロボットを見かける事は滅多にない。そのため、この都市に住む人々の労働はわりと少ないのである。
周囲を観察しながら都市の中心部を目指し歩いていると、上空から声が聞こえてくる。街の警備車両だ。
「白い帽子を被ったそこのきみ、ちょっといいですか?」
あたしはハァとため息をつき、立ち止まる。上空からゆっくりと車両が降りてきて、わたしの目の前で停車する。車両のドアが開くと、中から紺色の制服を着用した警備員が2人降りてくる。
「すいません、ちょっとお話させてもらってもいいですか?」
ベテランであろう中年くらいの男性が声をかけてくる。若い女性は不慣れなのか、少し緊張している表情である。
「はい、なんですか?」
「きみ、見慣れない服装をしてるけど、街の外から来た人?ちょっと気になってね」
中年くらいの男性が、あたしの全身を汚いものを見るかのような視線で見てくる。失礼なおっさんね。
あたしは白っぽい灰色の作業服を上下に着ていて、中に黒色のインナーを着ている。あたしはおっさんに、仕事の打ち合わせで街に来た事を説明する。
「ーてわけです。ちゃんと許可とってますし、何なら許可書を確認しますか?」
「そうですね、ちょっと見せてください」
あたしは左手の時計を前に向け、端末を操作すると、許可書と書かれたホログラムを出した。
「確認します、念のために記録をとらせてください。三木さんよろしく」
「は、はい!」
〈ピピッ、データノ記録ヲ完了シマシタ〉
データを読み終えると、あたしは左手を降ろした。
「許可証の職業欄に職人と記載があるけど、きみは技術者としてこの街へ?」
「ええそうよ〜何か問題があるかしら?」
「……いえ、分かりました。ご協力ありがとうございます」
中年のおっさんは、何やら納得したような表情となる。すると、隣に居た若い女性が、言葉をかけてきた。
「お、お仕事頑張ってください!」
「あら?ありがとう、頑張るわ〜」
あたしは笑顔で返事をすると、2人は乗ってきた車両へと戻っていく。警備車両が再び上空へと浮き上がると、飛んでいく姿を見届ける。
「あの若い子、変わり者かしらね」
まさか、応援されると思っていなかったあたしは、頬を指でポリポリとする。気を取り直し、再び管理センターに向かって歩きはじめた。
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