第一章 ー中心部を目指してー
《CE建設株式会社 事務所》
「やっぱりピンチね~」
事務所の机の上で、お金の残高を記した帳簿とにらめっこをしていたら、思わず嘆いてしまう。なぜなら会社の資産残高が残り少なく、経営がピンチだからである。
「白崎社長、そろそろ仕事してきたらどうですか?」
事務所の入口側に座っている子から、呆れたような表情で小言を言われる。はいはいと返事をすると、パソコンの電源を切る。
「これ飲んだら行くわ〜」
あたしの名前は【
マグカップに入っている残りのコーヒーを飲み干すと、机の上を整理整頓する。
「白崎社長、今回の仕事では、しばらく外泊されるのですよね?」
「そうね、しばらく会社を留守にするわ。あたしが居ないからってサボっちゃ駄目よ?」
「…そうですか、でしたら一応事務所に待機しておくようにしておきますよ」
「フフフ、冗談だって〜。ちょっとした連休にしてくれてていいわ」
この子は会社の従業員で、事務員として働いてもらってる。名前は【
あたしは机の上に置いてあった時計と、トラックの鍵を持つと椅子から立ちあがる。
軽く背伸びをしたあと、壁に引っ掛けてあった白い帽子を被り、事務所の入り口まで向かう。
「それじゃあ恵見、留守の間よろしくね〜」
「わかってますよ、気をつけて行ってきてください」
「うんわかった、行ってきま〜す」
恵見に見送ってもらいながら、私は事務所のドアを開けると階段を降りていく。1段1段ゆっくりと降りていきながら、わたしは事務所の周囲に目を向ける。
ここは街の中心部から、かなり離れた工業地帯である。周囲に人が住んでいる気配はほとんどなく、無人となり朽ち果てた建物が立ち並んでいる。道路の舗装も広範囲にめくれており、目を閉じて歩くと、転びそうになるほど荒れていた。
「今日は曇りね、熱くはないけど涼しくもないわ〜」
そんな事を考えながら階段を降りると、事務所の1階の前を通り過ぎて、トラックが停めてある場所へと向かう。運転席の鍵をあけ、トラックに乗り込むと、鍵をシリンダーに刺しエンジンを始動させる。
〈キュルル、ブオォーンッ〉
重低音がトラックのマフラーから鳴り響く。あたしは持ってきた時計を左手に装着すると、目的地を地図で確認する。
「さて、中央都市に行きますか」
わたしは左手でギアをセカンドにいれると、トラックを走らせはじめる。
このとき、時計の画面には通信エラーと表示されていた。
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