屋台で出張シリーズ

美味しそうな

わたくしは大天使ガブリエル、屋台の焼き鳥が美味い!

ここは、海のほとりにある、聖なる神殿です。

私は大天使ガブリエル。神殿に訪れた、道に迷いし者達を導く者。

そしてまた、神よりのお告げを皆様にお伝えする立場にて、神殿に従事している者でございます。

そして今日もまた、迷いし者が、救いを求めてこの神殿へといらしたようです。


ペンギン「大天使さま……どうして僕は空を飛べないのでしょうか…?」

「それはね……今のあなたの翼は、筋力不足なのです。一生懸命、体を鍛えてごらんなさい。いつかきっと、飛べるようになりますよ?」

ペンギン「そうだったんだ……大天使さま、ありがとう!!」


自分の歩む道を、見つけたようですね……

さっそく、腕立て伏せをしながら、ペンギンは神殿から出ていった。

ふと、神殿に置いてある時計を見てみると、定時になっている。


「さて、今日のわたくしの役目は終わりましたね……はよ帰ろ」


ロッカールームに行くと、背中についてる翼を外し、天使用の衣装から私服へと着替える。

ラフな格好に着替えたら、神殿から外にでる。


「はあぁ〜疲れた。お腹空いたし、何か買って帰ろ〜っと」


確か今日は、スーパーで天使まんじゅうが特売してたはず!

スーパーを目指して歩いていると、とある海岸で、見たことのない屋台を発見する。

なんだか鶏肉が焼けたような、いい匂いがここまでただよってくる……

私は近くまで行ってみる事にする。

屋台の看板には、[焼き鳥だよ]と書かれていた。


「あれ〜こんなとこに焼き鳥屋があるじゃん!?ちょうどいいや、ここで食べていこっかな〜」


私は屋台に入り、席へと座る。可愛らしいマスターが、笑顔で出迎えてくれる。


「いらっしゃ〜い、何にする?」

「じゃあ〜まずは、ねぎまの塩をください!あと生中ひとつ」


マスターはキンキンに冷えたジョッキで、生中を出してくれる。

待ってました!と言わんばかりに、まずこれをゴクゴクと飲む。

かわいた喉を、通過していく時のシュワシュワ感……極上の苦み……後からカアァァっとくるこの感覚……


「んん〜♪ーーんまい!!!」


ベストなタイミングで、ホカホカのねぎまがやってくる!

わたくしはそれを手に取ると、まずは鶏肉の部分をパクりと食べた。

ほどよい塩味に、弾力のあるこの肉質……そして噛むたびに出てくる鶏の旨味……

お次にネギをパクりといく。

口の中に残った鶏肉の旨味に、ネギの香りが加わる……

わたくしは、残った生ビールを、ゴクゴクを飲み干すと、ゴトンッと音をたてて机の上に置いた。


「ぷはぁーこれこれ♪このために私は天使やってるのよ〜〜。マスター!!生おかわり!あと塩のぼんじりと、鶏皮くださ〜〜い♪」

「は〜い」


焼けた砂肝、鶏皮が置かれると、同時に生中がやってきた。

私はすぐさま、砂肝をパクパクと口の中に運ぶ。

コリッとしたかと思ったら、口の中で砂肝が弾んでいく……ゴクンと喉を通り過ぎると、お次に鶏皮を口の中に運んでいく……気がつけば鶏の油が、口の中を支配している…

そこにすかさず、ビールをゴクゴクと体内に流し込んでいく……


「かぁあああ、うんめぇ〜〜♪」


平常心を忘れ、だんだんとフワフワした感覚へと移り変わっていく。

残りをパクパクと食べながら、マスターにこんな事を聞いてみる。


「ねぇマスター聞いてよ〜。私いつも神殿でさ〜、いろんな子の人生相談に乗ってるんだよね〜。私は凄い地味かな〜って思ってるんだけど。この仕事、正直どうおもう〜??」

「そうね〜……」


マスターは鶏肉をジュウジュウと焼きながら、こう答えた。


「確かに、地味かもしれないわ。でもね、あなたは地味って思っていても、あなたの言葉に救われた子って、沢山いると思うのよ。絶対数は少ないかもしれない、結果も分かりずらいかもしれない…それでも、その仕事に自信を持てばいいわ。きっといつか、良かったって思える日が来るわ〜」


そう言ってくれたあと、焼けた手羽元を空いたお皿の上に乗せてくれる。

これはサービスだからと、微笑みながらそう言ってくれた。

私は焼けた手羽元をかじり、ビールを体内に注ぎ込んでいく。


「そっか……そうなんだ……。私、これで明日も頑張れそうだな……」


私は再びジョッキを空にすると、もう一杯おかわりを頼む。


「マスター!!なんかオススメ焼いてよ〜〜」

「フフフ、そうね〜。それじゃあお次はーーー」


夕日が沈んでいき、辺りは徐々に黄金色こがねいろの世界へと包まれていく。

そんな中、人知れぬ屋台で、楽しそうにビールと焼き鳥を楽しむ、1人の女性の姿があった。

第三者からしてみれば、ただ飲み食いしているだけに見えるだろう。

でもその女性にとっては、幸せなひと時である。

きっと、この日食べた焼き鳥の味を、忘れることはないだろう。


ーーーーー


次の日の朝、神殿にて。


神のお告げ「……ガブリエルよ………ちょっと飲み過ぎたんじゃないかの?」

「らって〜、おいひかったんらも〜ん〜☀︎」


私は大天使ガブリエル。道に迷いし者を導く存在。

でも時には私だって、血迷う事もあるってもんよ。

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モンスターズ・キッチン もっこす @gasuya02

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