我は死神、フライドポテトを食べて天に召されたわ…

我は死神、魂を黄泉へと案内する者なり。

今日も我は、三途の川へとやって来た魂を、導いてやろうではないかぁぁ!!


火の玉「あー死神さん、そろそろ交代の時間で〜す」

「お?もうそんな時間か。あとはよろしく〜」


火の玉くんが、我に交代の時間だと教えてくれる。

事務所で次のシフトを確認すると、我はタイムカードを押した。

さて、腹も減ったし、ジャンクフードでも食いにいくとするか。

持っていた鎌を、ロッカーにしまう。


「時空へのゲートよ!開けぇぇ!」

〈ーーーゴォォォン〉


我は時空へのゲートを開くと、その中をくぐる。夜の山の中へとワープした。

ああー……いつ通ってもあの感覚には慣れないな、胃もたれしたような気分になる。

おや、周囲に迷える魂がいるようだ……どれ、気晴らしに魔法でも使うとしよう。


「邪悪なる闇よ…我に裁きの力を与えよ!!デッド・オブ・ドレイィィーーン!!」


我が両手を空に掲げると、暗黒の竜巻が周囲を取り巻く。竜巻から、邪悪なる者の雄叫びが鳴り響く。

〈ゴウゥゥ!おォォォォォォォォーー!!〉

そして周囲に漂う彷徨える魂を吸収しようとした次の瞬間ーー!!


寝てたニワトリ「おい!うるせぇぞテメェ!!今何時だと思ってんだゴラァ!!」

「あ……スンマセン、もうやめます」


我は魔法の詠唱をやめると、周辺の闇はパタりと消え去った。


寝てたニワトリ「わかればよろしい。じゃ、俺は寝るからな」

「はい、おやすみなさい」


ううむ、まさかニワトリに怒られるとはな。奴は魂を量産する存在、下手には逆らえぬ……

仕方ない、腹ごしらえだけでもしようではないか。

以前あの世に来た者が、美味いと言っていたお店へと向かう事にする。


「うーむ、ここか。天に召されるくらい美味いと言っていたが……どれ、試してみよう」


我はお店のドアを開け、中へと入る。


「いらっしゃいませ〜、何名様ですか~?」

「我は死神…魂を導くものなり……」

「おひとり様ですね?マスター、死神様のご来店で〜す」

「いらっしゃいませ〜」


我は人間の案内人に、テーブル席へと案内されると、席に座る。

あれ〜?我は死神ぞ?なぜビビらないのだ?鎌がないからか?

まあ……よしとしよう。

我はお店のメニューを確認する。

[フライドポテトとお好きな飲み物]


え?これだけ?他にはないの?ちょいと殿様商売すぎやしねえか?

人間の案内人が、我に水を持ってきてくれる。そして注文を聞いてきた。


「ご注文はお決まりですか〜?」

「………フライドポテトください、あとジンジャーエール」

「かしこまりました。マスター、プライドポテトと、ジンジャーエールで〜す」

「あいよ〜」


我は水を飲むと、カウンターに先客がいた事に気がつく。

あれ?あいつ何か……頭の上に、輪っかがついてね??


ひよこ「マスター、ごちそうさま。ありがとう、これで思い残す事はないよ」

「フフフ、いってらっしゃい」


〈ファ〜ン……ーカァー!カァー!〉

ひよこを囲うように、天から光がさす。白いカラスが舞い降りてきて、一緒に頭上の光の中へと消えていった……

……え?マジ?ってゆうかなんで白いカラスなんだ?今頃の天使ってあんな姿なのか?


「そんなに美味しいのか?」


我は厨房の中を凝視する。どんな調理法か気になったので、作るところを見る事にした。


ーーーーー


ジャガイモの皮を剥き、大きめの細切りにしていく。

切ったジャガイモを流水で洗うと、網をのせたトレーの上に置き、キッチンペーパーで表面の水分を軽く拭き取る。

網を外し、トレーの上にコンソメの粒をまぶしていく。

その上にジャガイモをのせ、軽く転がしていく。

そして、片栗粉・薄力粉を混ぜたものをジャガイモにまぶし、馴染ませていく。

大きめの鍋に、ジャガイモを投入する。

そこに、ジャガイモがしっかりと浸るくらいの油を注ぎ入れてから、中火にかける。

綺麗なきつね色になってきたら、網をのせたトレーの上に置き、粗塩をまぶす。

そして皿に盛りつければ、完成である。


ーーーーー


「できたわ!ミーリン、持っていって〜」

「はーい、ただいまー」


人間の案内人が、我の席にプライドポテトとジンジャーエールを持ってくる。

うーむ、いい匂いがするではないか。


「お待たせしました、フライドポテトです。熱いので気をつけて召し上がりくださいね」

「う、うむ……」


まあ、まずは頂くとしよう。我はフライドポテトを一口かじる。

げ、美味いぞこれ!!!!こんなにホクホクしたフライドポテトは初めてだ!!!

かじったポテトを口の中に放り込むと、すかさずもう1個を手に取りかじる……


「ハフハフッーゴクン…ーぷは!パクッーモグモグー」


止まらねえ……ポテトを掴む手が止まらねえ……

ホクホクしたポテトに、あとからくるスパイシーな味……そこにすかさずジンジャーエールを流し込めば……口の中はリセットされ、再びポテトの味が蘇る……

これがジャンクフード!?いや…違う…れっきとした一品料理じゃねぇか……


「ディーーーン!!!」


我はポテトを全て食べた後、不思議な感覚となっている事に気がつく。

体が浮いているようなこの感覚……あれ…光?

ってゆうか…なんか体浮いてね???


「カァー!」


なんで白いカラスがここにいんの……?

まさかと思い、我は頭上を見上げると、全てを理解した。


「ああ〜……そうゆう事ね……」


我はカラスに連れられて、天へと召された。

天に召されたあと、三途の川がある場所に来る。


火の玉「あれ〜戻るの早いですね。シフトの時間にはまだーーって!頭に輪っかがついてる!?死神さん、誰にやられたんですかぁぁぁ!?」

「フライドポテトだよ」


我は死神…魂を黄泉へと導くものなり……でも今は……

ま、悔やんでもしょうがねえか、導かれるのも悪くねえだろ。


ーーーーー


「マスター、さっきのお客さん、召されちゃったみたいですよ〜?」

「そうね〜、あたしの料理が、魂に響いたみたいね〜」


今日はたくさんのお客さんに喜んでもらえたわ〜

つまりそれは、それだけ美味しいって事よね〜







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