俺はデュラハン、お好み焼きが美味い!

俺はデュラハン、漆黒の鎧を着ている。そしてとある屋敷で働いている騎士だ。

だが、屋敷の主にこき使われ、過労死しそうになったので、今朝家出してきたのである。


「まったく…安月給でこき使いやがって……休みも少ないし、ブラック企業だろ……」


今からグッバイワークに行って、転職しようと思う。だが腹が減ってはいいクソはでぬ。

サイフを満たす前に、お腹を満たそう。俺は噂で美味しいと評判のお店に行く事にした。

トコトコ歩いていると、噂のお店を見つけたので、中へと入る。


「いらっしゃいませ〜お客様はお一人様ですか?」

「俺はデュラハン、サラリーマンだ」

「かしこまりました、デュラハン1体様ですね。マスター、お客様で〜す」

「へい、らっしゃい」


優しき娘に、カウンター席まで案内してもらう。俺は席に座ると、あることを思いだす。

愛馬を屋敷に置いてきてしまったのだ……


「おっと、忘れるところだった。首輪の解除っとー」


俺は頭を外し、鎧の中からスマホを取り出すと、アプリ起動させ、首輪解除ボタンをONにした。あとはGPSもONにしておく。

これでよし、愛馬は自由の身だ。

外した頭を戻すと、メニューを見てみる。

[お好み焼き、豚玉か鳥玉]


「豚玉にするか…鳥玉でいくか…」

メニューを見て悩んでいると、優しき娘が水を持ってきてくれ、注文を聞いてくる。


「ご注文はお決まりですか〜?」

「コホン…安いほうはどっちかね?出来ればワンコインがいいのだが」

「え?ああ〜そうゆう事でしたらー」


優しそうな娘が、何やら店長と話をしている。すると店長らしき人間が、カウンター越しに話かけてくる。


「お好み焼きはサービスしとくから、それを食べていくといいわ〜」

「お気持ちはありがたいが………騎士としてルールは守らねばと……」

「フフフ、じゃあツケでいいわよ〜」


店長らしき人間が、カウンター席にある鉄板の上で。お好み焼きを作り始める。

俺は人間の心遣いに感謝しながら、作る光景を眺めた。


ーーーーー


事前に、お好み焼きの生地を準備しておく。

和風の出汁に、薄力粉・卵・天かす・細く千切りしたキャベツ・すりおろした山芋を少々、それらを加え、若干トロみがつく程度に混ぜ合わせておく。


油をひいた鉄板の上に、お好み焼きの生地を大きめに広げる。

生地の上に、豚バラ肉、鶏のせせりをたっぷりとのせ、塩コショウで軽く味付けをする。

生地に焼き色がついたら、ひっくり返す。

お肉を乗せた面に火が通ったら、鉄板の上に細く砕いたカツオ節をまぶし、その上にお好み焼きを乗せる。

軽く焦げ目をつけてから、もう一度ひっくり返す。

仕上げに、カツオ節の花削りをまぶし、ソース、マヨネーズかけると、青のりを散りばめ、紅生姜を乗せれば完成である。


ーーーーー


「はい、お待たせ。豚&鳥玉のミックスよ」


目の前に、ボリュームのある特大のお好み焼きが置かれる。

ソースとカツオ節の香ばしい匂い……そして舞踏会で踊る姿のように、トッピングのカツオ節がゆらゆらとしている……


「これが、ブシの姿なのか……」


俺はナイフとフォークを巧みに使いこなし、お好み焼きを一口食べる。

うぉぉぉ!やわらかい!!!表面がパリっとしていて香ばしく、そして口の中に和の香り広がっていく……食感も申し分ない……

途中から現れる豚肉とせせりが、旨味と食べごたえを同時に演出してくる………

まるで……優雅なひとときの中にいるようだ……


「感じる……過労した体のエネルギーへとなっていくのがわかる……」


紅生姜を添えて、もう一口食べる。

なぜ…涙がでてくるのだ……この達成感……

それはまるで……残業を終えた後の気持ち……

俺はがっつくように、残りのお好み焼きを全部食べた。

〈バコォーンー!ヒヒーン!!〉

突然店の壁を突き破り、鎧を着た黒い愛馬がお店に入ってくる。


「ダークホース!!」


そうか……お前も壁を乗り越えたのだな……

俺は愛馬に騎乗すると、勢いよく外に出る。

〈バコォォーン!〉

さらに壁が壊れる。外に出ると、俺達を囲うように、足元から白い魔法陣が現れる。

心が……体が……清められていく!!!


「オオオォォォォ!!ヒヒーン!」


キタキタキタキターー!!!黒き漆黒の鎧が、白き聖なる鎧へと変色していく。そして愛馬も、黒色の体が白色になると、効果音が鳴る。

〈シュイーン、シャキーン!!テテ〜ン♪〉

眩い光を放ち、俺は聖なる騎士へとなった!!


「ホワイトデュラハン参上!!これ以上……残業なぞさせるものかぁ!!!共に参るぞ!シャイニングホース!!」

「ヒヒヒヒーン♪」


俺は屋敷の主とグッバイするため、そしてホワイト企業に転職するため、新しい門出へ。

許してくれ店長……この恩は決して忘れない!!


ーーーーー


「あちゃ〜、結構大きな穴が空きましたね〜」

「そうね〜、また直すから別にいいわ~」


今日はお腹を空かせたデュラハンを、お腹いっぱいにしてあげる事ができた。

空いた穴を塞ぐ方法は、いくらでもあるわ〜


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