第15話 落ちた石ころ(超改稿)

桃の事だが。

俺としては俺自身の感情が不安定だ。

だから何も言えない。


どうしたらいいのか。

思いながら俺は会議に参加してから。

陸上部に行くと手を振ってから去った兎の背を見送ってそのまま帰る事にする。

俺は考え込んでいた。


それから校門を後にして数歩。

俺は衝撃を受ける。

それは何故かといえば。

目の前の電柱付近に厳つい顔の桃?が立っていたから。

いや.....違う。


これは.....桃じゃない!?

俺は愕然と衝撃が混じった感じでその顔を見る。

穢れが混じった様な顔をした黒い制服を着た少女である。

茶髪のロングで髪留めを2本している。

そして俺に気が付きスマホを仕舞う。


「お前が杏とやらか」


「そうね。桃が世話になっているわね」


「世話はお前のせいでな。随分と迷惑が掛かっている」


「あら失礼ね。私も被害者よ」


「なんのだ。ふざけるな」


「私はあの子の手によって動画が流された。それで私は怒っているんだけど。あの子は自らの犠牲は厭わないでやったみたいだけど傍迷惑なんだけどね」


その言葉に気持ちが逆撫でされる。

それから怒り混じりに、桃の気持ちは考えた事あるか?お前、と尋ねると杏は、まあ考えた事もあるよ。双子だし、と答える。

だけど、とも言ってくる。


「あの子には恨みがあるから」


「お前.....」


「私を何様と思っているのか」


「お前のせいだろ。全部は」


「私は周りに配慮しているわ。勘違いしないでくれる?」


配慮とか。

全然それはアンサーになってない。

思いながら俺は杏を見る。

俺はその吸い込まれそうな瞳を打ち壊す様に告げた。


「残念ながら何をしに来たかは知らないけどお前を全く信頼出来ない。それから桃を利用するのは止めろ。マジに最悪なんだが」


「私は利用しているんじゃない。桃の気持ちも尊重しているから」


「嘘ばかり吐くな」


「.....嘘じゃないけどね」


言いながら踵を返して去ろうとする杏。

まあ事は進んでいるみたいだからどうでも良いけど、と話しながら。

俺はその姿に、忠告しておくが、と言う。


それから杏を見る。

お前の暴力は全てが無意味だ。お前がやった事はそのうちしっぺ返しの様に返ってくるぞ、と警告する。

すると杏は俺を無機質な目で見てくる。


「返ってくる?そんな訳無いでしょ。今までが返って来なかったんだから」


「甘いな。.....お前は人生経験が足りない」


「そうは思わないんだけど」


「どっちでも良いが。いずれにせよもう桃に接触しないでくれ。お前と関わったら全てがマズイ気がするから」


そう告げる。

すると杏は、失礼な言葉ばかりね、と言いながら俺を見つつ、まあそう思われても仕方がないか、と納得した様な言葉を放つ。


俺はその言葉に、そうだな。お前はそれ程酷い事をしている、と言葉を発した。

すると杏は、こうするしか無かったんだけど、と言ったら貴方は信じる?、と話した.....何だそれは。

どういう意味なんだ、と思い杏を見る。

杏は俺に向いた。


「私はね。.....お父さんが好きだった。だけどお母さんと離婚してお父さんが私を手放してから愛情を受けてないって思った。悔しくてこうして歪んでいったから。私は桃が許せない」


「.....単なるメチャクチャな逆恨みじゃないか.....でも.....そうなのか」


「そう。だから私は全てが歪んだ」


「.....」


だけどそれでいても今の状況とお前の状況。.....これは差がある、と言う俺。

それから、お前がやっている事で桃が苦しんでいる。.....もう止めてくれないか、と言ってみる。

すると足元の石を蹴っ飛ばしてから拾う杏。

杏はそれを見ながら俺に聞く。


「.....嫌って言ったらどうするの」


「ゴリ押しでも止める。お前をな」


「へぇ.....面白いね。.....アンタ」


「桃は俺の絵を見ながらよく褒めたりしてくれた。その分俺は.....お前を止める。お前なら戻れる」


「.....へぇ.....?」


それから目を細める杏を見る。

杏は石を持ったまま俺を見てくる。

そんな杏に、だからこそ、と俺は告げる。

そうしてから真っ直ぐに杏を見る。


「お前はあくまでアイツの双子なんだから」


「.....」


石をアスファルトに落とす杏。

それはコロコロ転がって行きドブに落ちた。

俺はそれを見てから杏を見る。

杏は、何故そう言えるのか?、と聞いてくる。

その言葉に、お前が桃の双子だからな、と答えた。


「.....でもお前のやっているその感じでは全てを失望させるだけだ」


「優しすぎね。アンタ。.....私は戻るつもりも無いし戻れない。だから敵同志ね」


「.....」


「.....帰る」


そして杏は去って行く。

俺はその姿を静かに見ていると背後から声がした。

俊樹先輩、と。

その姿を見てから、桃か、と言う。

はい、と答えた桃。


「お前見ていたのか」


「半分ぐらいはですね。.....杏、接触して来たみたいですね」


「.....ああ。そうだな」


「杏.....前は良い子だったんですよ。だけどお父さんに裏切られた様に自らが感じてからは変わりましたね」


「.....」


俺は、桃。杏に言っといてくれないか。今度付き合えって、と言葉を発する。

桃はその言葉に、え?、と目をパチクリする。

そして俺を見てくる。

その顔に俺は話す。


何をするか?

それは簡単だな。

アイツに絵を見せてやろうって思ったのだ。

何をするかはお楽しみだが。

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