第9話 兎の想い(超改稿)

最高の絵.....って何だろうか。

俺は考えながら放課後になってとある場所に来た。

それは、美術室、である。


俺はこういう場所は授業中以外で久々に開く事になる。

そして中に入るとそこに桃が何故か居た。

え!?、と思う。


「.....お前.....何をしているんだ」


「俊樹先輩。少しだけお話をしても良いでしょうか」


「.....何の話だ」


「私の案件の状態です」


「.....!」


「そろそろ来るかなって予想していました。美術室に。.....この前からずっと待ちましたけどね」


「お前.....」


「私は.....浮気してないです」


「.....」


するとドアがゆっくり開いた。

それから兎が顔を見せる。

桃。アンタの行動は疑問点が多すぎるんだけど。今は貴方に俊樹は譲れない、と言葉を発した。


そして兎は何か徐にスマホを取り出した。

それから、友人から送ってもらった、とそれを再生する。

そこには喘ぎ声という感じのエロい3分の動画が。

これは.....、と思う。

録画していたのか誰か。


「これでもまだ否定するつもり」


「.....」


桃は不愉快そうな顔をする。

それから、なんて穢らわしいものを見せるんです?、という感じで。

するとこれが穢らわしい?.....じゃあ貴方はもっと穢らわしいんだけど、と兎は俺に向いてくる。

この動画にはまだ続きがある、とも。


「.....え!?」


「マスク姿が映っているから。それは桃の顔に似ている」


「.....!!!!?」


「もう良い加減に白状したら。.....桃。これは決定的でしょ」


「私じゃないよ。.....信じてくれるよね?俊樹先輩.....」


桃は俺に真剣な顔を見せてくる。

だけど目元が似ているからね、と兎は怒った様な顔をする。

マスク姿が晒されているのか.....、と思ってしまう。

具体的に顔が映ってないのか?


「的確な証拠はあるのか?兎」


「マスクは取ってないから分からないけど.....」


「それだけじゃ判断のしようがない」


「.....え?そんな。これでも其奴の肩を持つの!?」


「こういう物事はやっぱりはっきりさせないといけないって思っているだけだ」


言いながら俺は桃を見る。

桃。足にある傷を見せてくれるか、と。

すると、まあ俊樹先輩なら.....、良いですけど、と隠れながら見せてくる。

そこには確かにダイヤ型の傷がある。

俺は困惑しながら顎に手を添える。


「俊樹先輩.....」


「兎が全てにおいて嘘を吐いているとは思えないんだよな」


「俊樹先輩はどっちの味方ですか?.....私は兎先輩が嫌いです」


「.....」


「.....」


そんな感じで言っていると兎が俺を見てからそのままスマホを仕舞う。

分かった。明確な証拠も無いし引き下がる、と言いながらそのまま踵を返した。

それから俺を見てから、帰ろう、と言う。

そして俺の手を握ってくる。


「.....あ、ああ。.....じゃあ.....」


「待って下さい。俊樹先輩はこの美術室に用事があったんです」


「はぁ?そうやって別の事をするんでしょ.....どうせ」


「兎先輩。貴方って本当に嫌味な存在ですね」


「それはアンタが悪いんでしょ」


「.....」


「.....」


それから左右から腕を引っ張られる。

帰ろう、という声と、残りますよ、という声。

俺は困惑しながら、ちょっと待ってくれ、と言うと数秒してからハッとした桃。

そして、何だ。そうか、と俯く。

それから兎を見る。


「兎先輩も好きなんですか?俊樹先輩が」


「え.....?!」


「.....は?.....ち、違う.....!?」


好きじゃ.....、と俺を見て耳まで真っ赤になる兎。

へ.....、と思いながら俺はボウッと火が顔に移る感覚がした。

赤くなってしまう。

兎が.....そんな馬鹿な!?

俺は汗をかきながら兎を見る。


「.....私は.....」


兎は大粒の涙を浮かべた。

俊樹に知られたく無かった、という感じでそして駆け出して行く。

桃はその姿に俺を見てくる。


それから、じゃあ絵を描きましょうか、と言ってくる。

そして手を握って歩き出す桃。

俺はその手を振り払った。


「.....桃。.....俺はお前を見損なったよ」


「え?.....え?」


「この状況が良い方か悪い方か傾いているにせよ女の子の秘めている好きな気持ちを誰かに手段としてバラすのは良くない。.....今回はお前の負けだ」


「.....え.....」


と、俊樹先輩?、と慌てた様に言ってくる桃。

俺はその姿を見ながら、帰る、と言い捨てながらそのまま踵を返した。

それから兎を追う為に下駄箱まで走り出す。

桃の、俊樹先輩!、と絶叫が聞こえたがそれを無視して、である。

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