第6話 悪天候の導き(超改稿)
兎と桃。
出会った当初は仲が良かった。
だけど俺が桃と付き合い始めてから最初の頃ら辺だっただろうか。
兎は桃を途中からいけすかない女だと思い始めたのだ。
俺は、確かにそうだが、とは思っていたが。
だけど初めての彼女だったのもあり。
信じたい気持ちがあった。
『私はあくまで俊樹先輩の役に立ちたいですから』
そんな事も言われたので、であるが。
俺はその言葉に、うーん、と悩みながら2人がそれぞれ役割分担で作った朝食を食べてからそのまま表に出る。
そして玄関に鍵を掛けてから歩き出した。
兎が噛み付く様に桃に向く。
「桃」
「はい」
「俊樹に彼女としてここ最近、俊樹にあまり接して来なかったのはおかしいと思うんだけど何処で何をしていたの」
「私はその間も学校の用事があったりしましたからね。メチャクチャに忙しかったんです。そんなにカッカしないでもらえますか。おかしいですよ?」
「.....」
兎はあくまでずっと桃を警戒していた。
その中でもそれを受け流す様に俺に向いてくる桃。
俺はその姿を見ながら顎に手を添える。
すると桃は、大丈夫です。二度と一人ぼっちにさせませんから、と言ってきた。
二度と、か。
俺は考えながら歩く。
そんな目の前を横道七尾(よこみちななお)が歩いているのに気が付いた。
その姿に、横道、と声を掛けてみる。
すると横道は振り向いて、お?角野じゃないか。おはよう、と柔和に言ってくる。
おはようございます、と言う俺達。
そんな横道は俺の横に注目した。
それから、?、を浮かべている桃を見て顎に手を添える横道。
何か観察する様な仕草だ。
「その子は山口桃か?」
「え?彼女、桃を知っているのか?」
「他校でも有名だぞ。.....めっちゃ可愛いっていう噂でな」
「そうなんだな」
俺の中学時代の友人の横道。
彼は色々あって別の高校に行った。
だけど今でも親しい間柄である。
俺は少しだけ久々の横道を見れて嬉しく思った。
その横道に笑みを浮かべてから俺は提案する。
途中まで一緒に歩かないか、と。
すると横道は一瞬だけピクッと反応してから桃を見て、まあそうだな、と反応する。
それから歩き出した。
兎が.....そんな一瞬だけ見せた横道の反応を怪しい感じで見ていた。
俺は、?、を浮かべて2人を見ながらそのまま歩き出す。
何だ今のは、とは確かに思ったがそこまで気にする事かな、と思う。
それから4人で.....登校途中の坂の付近まで歩く。
そこから分かれ道になるのであるが。
横道が空を見上げながら呟く。
「それにしてもかなり良い天気になったな」
「確かにな」
「.....そうだね」
兎は曖昧な答えを導く。
そしてそのまま俺達は坂の途中まで来る。
すると横道が、んじゃ。俺こっちだから、と言いながら手を挙げた。
その言葉に俺は、だな、と答えながら横道に手を挙げる。
じゃあな、と見送った。
横道も手を挙げてながら俺達に挨拶をする。
「良い性格なのは変わらずだね」
「まあ昔から変わらないな」
「うん.....」
「.....?.....どうした?」
「ううん。気のせいだと思うからね」
兎はそう言いながらも曖昧な表情を浮かべていた。
俺はその姿に首を傾げる。
そして俺は兎を見る。
すると桃が、すいません。遅刻しますよ、と言ってきた。
俺達はハッとしてからそのまま慌てて学校まで行く。
危なかった。
☆
「クラスマッチが近いから係とか決めんぞ。真っ先に言うが。クラスマッチ委員をやりたい奴は居るか?もし居たら手を挙げてくれ」
「いやー」
「どうなんでしょうねぇ.....」
比較的若い担任の猪熊(いのくま)先生の言葉に。
男子達も女子達も首を生意気な感じで横に振ってから否定する。
丁度このクラスではクラスマッチの話題になっていた。
何というかもう直ぐ.....クラスマッチだしな。
しかし確かに暑いしクラスマッチ委員とかやりたい奴居ないだろうな。
簡単に現れるとは思えない。
俺は暑がっている横に居る同級生の兎を見ながら窓から外を見る。
まあ確かにあっついもんだな。
「.....」
そしてふと思った。
そういや.....兎も言っていたな。
頑張ってほしいって、と。
俺は考えながらなかなか委員が決まらない中。
困っている猪熊先生を見てから手をそのままスッと挙げてみる。
すると猪熊先生とかクラスメイトの視線が一気に俺に集まる。
猪熊先生は物珍しげな感じで笑みを浮かべる。
「お?珍しいな。角野。お前が委員をやってみるか?」
「.....はい。やります」
「そうか。.....じゃあ女子の側は.....」
とそこまで言い掛けてからいきなり兎がバッと手を挙げた。
それから、私がやります、と宣言する。
俺は、!?、と思いながらその姿にビックリする。
その中で猪熊先生は、おお。一気に決まったな。有難い、と笑顔になりながら、じゃあお前らに任せる、と言ってくる。
兎はやる気に満ちていた。
「.....え。兎。どうしたの?こういう面倒臭い事をやるの珍しいじゃない?」
「そうだよねぇ」
クラスの兎と仲が良い女子達がキャッキャッとそう話す。
すると兎は、いや。俊樹をサポートしようって思って、と笑みを浮かべる。
女子達は驚いた表情を浮かべる。
俺もその言葉に、!、と反応する。
アイツ、と赤くなって思ってしまった。
猪熊先生が苦笑いを浮かべる。
「どうでも良いけど恋愛にうつつを抜かして業務の全てを忘れんなよぉ?」
「「いや!?先生!?」」
赤くなる兎と俺。
すると周りがヒソヒソと言い始めた。
それから猪熊先生に向く。
恨めしやな感じが混じった様な感じで。
「いやいや。んな馬鹿な。彼女居ますからね」
「そうっす」
「確かに」
「あ。そうだったな。ハッハッハ!」
猪熊先生は高笑い。
桃と俺のお付き合いの事を周りはしっかり知っている様だ。
後頭部に手を添えながら謝ってくる担任。
学校中に広まってんなこの事。
思いながら俺は兎を見る。
兎は不愉快そうな顔をしてたが直ぐに笑顔になった。
俺はその顔を見ながら俯く。
ふむ、と思いながら。
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