第5話 兎と桃(超改稿)
俺は俺自身の事が今でも分からないが。
バーンアウトしたのには複数の理由がありそうだ。
どういう意味か。
俺自身が桃にもそうだが.....親父やお袋にも心が傷付けられた、という話だ。
心もそうだが身体も全てが。
だから何というかやる気が出ないんだな。
つまりどういう事かというと。
全部においてやる気が失われているから桃の事も詮索したく無いという気分になっているんだな、と。
何というか.....疲れたんだな。
思いながら居ると兎が俺に向いてきた。
「俊樹.....その」
「うん?」
「私.....もう帰るけど。大丈夫かな」
「.....俺は子供じゃないから。.....大丈夫だぞ」
兎は涙を流し過ぎた目で見てくる。
俺はそんな兎の顔を見つつ申し訳ない気持ちを感じる。
玄関先で兎は靴を履きながら、うん、と答えた。
そして俺を見上げてくる。
ねえ。絶対に後回しにしないで考えて、と言ってきた。
俺は、!、と思いながら兎を見る。
「そうだな」
「強がったってどうしようもないよ。.....だからお願い」
「.....ああ」
そんな会話をしてから俺は兎を見てみる。
兎は俺のそんな顔にいきなり恥ずかしくなったのか頬を朱に染めた。
それから、じゃ、じゃあね、と去って行く。
その姿を見ながら、ああ、と言いながら手を振って見送る。
そして玄関を閉めてから.....崩れ落ちた。
「.....どうしようもない感情だな。本当に」
そんな事を呟くとスマホに電話があった。
その相手は桃である。
ビックリしたな。
俺はゆっくりと崩れ落ちたまま電話をかける。
そして、はい、と返答する。
すると明るい声がした。
『もしもし?俊樹先輩ですか?』
「.....ああ。どうしたんだ」
『今度、町の画廊で絵画展があるんです。.....一緒に行きませんか』
「.....」
『.....?.....俊樹先輩?』
「あ、ああ。すまない。それは行くのはちょっと考えても良いか」
『.....?.....え?良いですけど.....どうしたんですか?』
俺は、特に理由はないが.....ちょっとしんどくてな、と答える。
すると桃は、成程、と頷いた様に返事をくれた。
俺はその言葉を複雑に思いながら、明日来るのか、と聞いてみる。
桃は、はい、と返事をした。
『明日お伺いしてから掃除しますね』
「.....」
俺はその言葉に、分かった、と返事をしてから。
今ちょっと忙しいからまた明日な、と言葉を発する。
桃は、はい、と言いながら、じゃあまた明日ですね、と笑顔な感じで伝えてくる。
それから、ああ。それじゃあな、と俺は告げて電話を切った。
正直言って話したくはない気分だが。
思いながら俺はスマホを持った手を項垂れて溜息を盛大に吐く。
そして真っ暗になっている部屋を見る。
「.....」
正直言って本当にどうしたら良いかも分からないが。
今は何とか持ち堪えるか。
そう思いながら立ち上がってからリビングに向かってそして勉強を始めた。
電気を点けて.....明るい気持ちで。
☆
不登校だったと言える。
それは誰の事かと言えば俺である。
約1ヶ月間、不登校だった。
俺は絵を描くのが嫌になったのもあって。
そして勉強が身に入らなくなり心身共に燃え尽きていたんだと思えるがそのまま引き篭ったのだ。
その引き篭もり生活を打ち壊したのは兎だった。
俺の家に1ヶ月間そのまま学校に通いながら居候して世話をしてくれて俺が外に出るまで看病してくれた。
ここまでしてもらっている癖に俺は兎に恩返しが出来てない。
いつか恩返しがしたいと思っているが。
「.....」
俺はマンションの一室の自室に籠る。
その中で俺は積まれていた中の絵の本を見ていた。
埃被ったデッサンの本である。
だがやはりダメか、と思う。
見ていると吐き気がしてきた。
これはいかん。
「.....チッ」
俺はそのまま悪態を吐きながらデッサンの本を棚に少しだけ乱暴気味に仕舞う。
それからまた盛大に溜息を吐きながら外を見る。
今日は少しだけ悪天候だ。
少しだけ嫌になってしまうな。
俺は思いつつそのまま横になる。
「.....」
時刻は21時を回っている。
すうっと息を吸い込んで吐いてからそのまま俺は寝る事にした。
そして目を閉じてから考えているといつの間にか寝ていた様で翌日になってしまい。
俺は起き上がろうとしてかなりビックリした。
何故なら桃が横に立っていたから。
ああ.....合鍵か。
「俊樹先輩。お早う御座います」
「そうだったな。合鍵を渡していたな」
「そうですね。以前、何かあった時用に渡されたのでそれで開けて入らせて頂きました。失礼だとは思いましたが昨日.....気分が暗そうだったので心配で.....」
「.....そうか」
俺はそう返答しながら桃の容姿を見る。
そんな桃の容姿だが。
茶髪のボブ。
そして顔立ちは柔和でかなり整っている様な美少女である。
童顔であるがあまり気にならない様に顔立ちが出来上がっている。
俺はその顔を見ながら数秒考える。
それから桃を.....再度見る。
「桃。.....お前は.....」
「はい?」
「.....いや。何でもない」
俺はそこまで言ってから立ち上がる。
それから桃を見据えた。
桃は俺をニコニコしながら見ている。
その姿に俺は少しだけ唇を噛んでからまた桃を見る。
桃。取り敢えず着替えるから、と告げた。
「あ。はい。分かりました。じゃあ表に出ます」
言いながら桃はそのままドアノブを持ってから俺の部屋から出て行こうとした時。
兎が複雑な表情で顔を見せてきた。
玄関が開いているからおかしいって思ったから、と言いながら、であるが。
俺は兎の厳しい顔を見つつ桃を見る。
桃は柔和な顔をしながらニコニコしたままだった。
「.....兎先輩。そんな顔をしてどうしたんですか?」
「聞きたいんだけど桃。貴方は何か疾しい事をしてないよね?」
「疾しい事?それは何でしょうか」
「.....」
兎は、まあ良いけど、と言い放つ。
それから、行くよ、と桃を促してから俺の部屋から外に出て行こうとする。
俺はその2人の姿を見てから、着替えて直ぐに行くから、と返事をする。
その中で兎が、待ってる、と返事をして去った。
桃も、はい、と返事をしてからそのまま出て行った。
見送ってから俺は部屋に転がっている使用期限間近の胃薬を飲む。
かなり胃痛がしたから、であるが。
因みにこんな胃薬はこの家のあちこちにある。
何故か?
それは簡単である。
俺が胃痛を感じ易いから、だ。
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