第3話 描けなくなった刻(超改稿)
俺は昔から海外の絵画とか日本の絵画の模写をよく描いていた。
とにかく絵が大好きだったのである。
だから鉛筆と紙で模写をよくしていた。
絵を写すだけだったがそれは心の穴をしっかりと埋めてくれた。
そんな模写にどれだけ救われたか。
とにかく有名な画家の絵を模写するのが.....生き甲斐だった。
だけど途中からそれでは飽き足らずになったのだが。
それからいつしか模写が飽きた俺はこれまでの知識でオリジナルの絵を描こうと思ったりして。
先ずは近所の画材屋に行ってから買ってきた木炭で画用紙に絵を描き始めて.....やがてそれも飽きてきて。
その次に本格的なキャンバスにアクリルガッシュでメチャクチャだが整った絵を描いたらその絵が小学2年生で.....何というか初めてながらも周りのプロ達を蹴散らして本格入賞した。
初めての賞は最高位の総理大臣賞だった。
それをきっかけにして他にも色々な賞を100回ぐらい受賞たのだが。
それらにおけるきっかけで俺は中学3年生まで美術部に入部して.....美術部の部長までしていたぐらいだった。
それはどれぐらいかというと中学校では旗やら幕の絵を絶対に任される感じで.....マスコミも取材に来たぐらいであった
メディアの中で、摩天楼の絵怪物、とあだ名が付けられるぐらいだ。
それは本当に滅茶苦茶な才能だったと思える。
今思えば、だが。
だけど俺はその世界からいつしか背を向け。
絵を描くのを完璧に辞めてしまった。
いつ辞めたかはあまり覚えてない。
きっかけもそんなに覚えてないのだが.....ある日、いきなり吐き気がして描けなくなったのだ。
とにかく最悪な気分だった。
ただ絵を描くのが苦痛になって筆を取らなくなったのである。
ある日突然抜け殻の様に。
それもバーンアウトしたみたいにパレットも絵の具もキャンバスも木炭も何もかもとかみんな見るのが嫌になった。
絶望しかないまま。
だから辞めてしまったのであるが。
そんな俺に。
光が一筋あった。
兎である。
そんな兎は、何故辞めたの、と必死に聞いてきたのだ。
お願い。辞めないで、と涙を流しながら必死に。
だが俺はその中でも、すまない。辞めたい、と言ってゴリ押しで絵を描くのを辞めてしまった。
最後は兎は、そう、と納得していたが。
今思えば後悔しか生まなかっただろうとは思う。
そして高校1年生の時にとあるきっかけがあって桃と付き合い始めた。
まあそれは残念な事になってしまったのだが。
浮気の容疑があるから。
昔から桃に対して兎は冷たい感じがあったが。
今は相当な恨みの凝縮になっている様だ。
つまり爆発の寸前。
桃のせいで絵が描けないんじゃないか、と今は疑っている様だ。
恨む理由は分からんでも無いけど.....でも違う気はする。
俺はその事だけは分かるから。
多分、違う。
そういう感じで、だ。
俺はその事を思いながら一連の話し合いの後、帰った。
因みに俺だが親が居ない一人っ子である。
その為に自宅に帰ると本当に孤独。
真っ暗な部屋に散らかった部屋。
片付けられてない生ごみ。
俺の親父とお袋達は此処には居ない。
何処かで金だけ俺に振り込んで豪遊生活をしている。
昔は慣れてなかったが今はもう慣れた。
これが、当たり前、と思っているから、だ。
親じゃない。
あんなのは、であるが。
どうして俺を見捨てたのか。
殺したいぐらいの恨みが前はあった。
「.....」
そんな事を思いながら俺はパックご飯を作り始める。
生鮮食品からなどからは俺はまともな食事は作れない為。
丁度、コンビニのお弁当や惣菜を買ってきて食べる様な日常を過ごしている。
振り込まれた金額だが1億円。
これは.....毎年振り込まれる。
だけど俺は金じゃない。
家族愛
が欲しかったんだ。
思いながら歯を食いしばる。
何というか週に何日か桃に食事などを支えてもらっていたが今は会うとかそんな気分ですらない。
そう考えているとインターフォンがピンポーンと鳴る。
観ると兎が立っていた。
「お前どうしたんだ」
『何かその。.....食事作ったから』
「.....は?.....え?お前。作ったのか?」
『.....食べて欲しいんだけど』
恥じらった感じでモジモジして言う兎。
俺は慌てて玄関に駆け出す。
それからドアをチェーンを外して開けてみるとそこには兎が青色の包みに包まれたお弁当を持って立っていた。
俺は、!、と思いながら兎を見てみる。
「お前.....たまにしか料理作らないのにか?珍しいな」
「頑張ったよ。苦手だし」
「何で作ったんだ?」
「それは俊樹が心配だからだよ。それぐらい分かるでしょ?」
「いやそれは.....でも有難いけどな」
俺はそう答えながら兎に頭を下げてお礼を告げる。
それから青色の敷に包まれたお弁当を受け取る。
すると兎は、ねえ。今日は家に入って良い?、と聞いてくる。
え?入っても良いが?今日はその日だっけか?、と言う。
因みに、その日、というのは。
兎は毎週の各3日だが俺の家を片付けに来るのだ。
何というか兎曰く部屋を適当に片していても埃が溜まるから汚い、という事らしい。
俺はちょっと申し訳ない感情だったが。
片付けれないからな。
本当に申し訳ない。
「ヘルパーとか雇わないでね。.....私が居るから」
「昨日来たのにな。.....良いのか?」
「良いの。片付けしたいから」
「わ、分かったよ」
何か兎に脅す様な目付きをされる。
俺は手を挙げながら盛大に溜息を吐く。
それから俺は苦笑いを浮かべる。
それから兎が入って来ると。
兎は、うわー。また汚い部屋になってる、と言葉を発した。
頬を膨らませながら。
そうしてから腕を回してからそのまま家事をし始める。
俊樹、と言われた。
「ゴミ袋をそっちに持って行って。明日、燃えないゴミの日だから」
「.....あ。はい」
「生ゴミは水を絞ってからちゃんと捨てる」
「あ、はい.....」
そんな感じで俺はテキパキと指示を受けながら兎を手伝ったりしながら部屋を片したりする。
すると兎が言ってくる。
「おじさんはもう帰って来ないの?」
と。
その言葉に俺は、まあどうでも良いけどな。あんなクズ、と答える。
それから片付けを進める。
お金を振り込むだけ振り込んでこんな良い人を見捨てるなんて本当に最低だね、と怒った様にワナワナ震える。
俺は、それは仕方が無いのさ、と言う。
「.....どうせあんな親だし」
「.....」
俺はその兎に話題を変える様に言ってみる。
お前って何か良い妻になるんじゃないか、と。
すると兎はガシャーンとシンクに三角コーナーを勢い良く落とした。
ビックリしたじゃないか。
思いながら兎を見る。
兎はビックリ仰天した感じで真っ赤になっていた。
「い、いきなり。話題を変えるって、な、何を言うの!」
「そ、そうだな。.....冗談のつもりだった。でもいきなりすぎたな。すまない」
「も、もう。いきなりだからめちゃビックリした」
「す、すまん」
ビックリしたのはコイツがいきなり三角コーナーを勢い良く落として俺もなんだが。
何でコイツはこんなに動揺しているのだ?
俺は考えながら兎を見る。
兎は耳まで真っ赤になっていてワタワタし始め作業が捗らなくなった。
俺はますます、???、を浮かべる。
「オイ。兎。大丈夫か」
「な、何が!!!!?」
「い、いや。お前が大丈夫かって話だが.....?」
「私なら大丈夫だけど!?気にしないで!」
「そ、そうか?」
俺はそんな兎を見ながらゴミを捨ててきた。
すると背後から視線を感じたので振り返る。
手でワタワタして慌ててから俺から離れて行った。
さ、さー!片付けのチェックをしようかな!、と言い始める。
俺はその姿を見ながら、お、おう?、とだけ返事をした。
メチャクチャ隠しきれない様な動揺だな.....。
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