(三)-2

「クソっ」

 信雄はそう呟かずにはいられなかった。

 次の瞬間、チェーンソーのモーター音が聞こえた。振り返ると、ジェイソンがチェーンソーを振り上げて信雄の頭めがけて振り下ろそうとしていた。

 信雄は慌てて走り始めた。今日このペンションに来た時に森を抜けた小道の方へ。

 この森の中のペンションは孤立した場所だ。誰かが助けに来ることはない。だからこの道を抜けて国道へ出れば、車が通るはずだ。そうすれば助けてもらえるはずだ。

 途中、二度ほど発砲音が聞こえた。幸い信雄には当たらず、そばの木に当たっていた。

 信雄は後ろを振り返らず、息を切らしながらとにかくひたすら前を見て走った。国道。国道に出れば、通りがかる車に助けを求めることができるのだ。


(続く)

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