(二)-13

 人影のせいではっきり見えないが、あのチェーンソーの下にいるのは先にこちらに戻ってきていた蘭子なのではないか。信雄はそう考え至ると、「逃げるぞ」と瑞穂に言った。

 信雄は瑞穂の腕を強く引いたが、瑞穂は動けないでいた。寝室の方を見つめたままだった。

「おい、瑞穂!」

 信雄は大声を上げた。

 すると瑞穂は寝室の方を見て、目を開いた。

 信雄がその視線の先を追うと、アイスホッケーのゴールキーパーのマスクを付けた人影がこちらを見ていた。声で気づかれたのか。

 ジェイソンのような人影は立ち上がると、チェーンソーをこちらに向けて回しながら向かってきた。

 「イヤー」と叫び声を上げながら、瑞穂は信雄の腕を振り切って入口から外へ出て行った。

 信雄は「おい!」と声を上げ、続けてペンションを出た。


(続く)

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