(一)-9

 その後、ビーズソファの上でうっかり寝てしまった信雄は体を揺さぶられて起こされた。

「今、悲鳴が聞こえたんだけど」

 目を開けると深刻そうな顔をした蘭子がそう言ってきた。

 信雄が時計を見ると時間は既に七時半を回っていた。三〇分以上眠ってしまっていた。食事の時間もどうしたのだろうか。そう考えてから耳を澄ましてみたが、特に何も聞こえなかった。

「何にも聞こえなかったんだけど」

 気のせいではないのか。それとも露天風呂に行った日向と咲来がじゃれ合っているのではなかろうか。

 信雄は瑞穂の方を見た。瑞穂は絨毯の上に座りこんでビーズソファを前に抱きかかえて震えていた。


(続く)

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