(一)-10

 それを見て、信雄は蘭子の言っていることが本当なのかもしれないと考えて、起き上がった。

 一度伸びをしてから部屋の中を見回すと、大隅の姿が見えなかった。食事の手配を確認しに行っただけならもう戻ってきていてもおかしくないのに。

 すると、聞こえた。確かに聞こえた。悲鳴だ。「イヤー!」という女性の声だった。外からだった。

 不安そうな顔をした蘭子が信雄の腕をとった。

「ねえ、聞こえた? 今の」

「ああ」

 何が起きているのかは全くわからなかった。だから、信雄は見に行くことにした。


(続く)

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