さぁ訊いてみよっか.

食連星

第1話

パンと手と手を合わせて

擦り合わせる.

「さぁ訊いてみよっか.」

呟く.


「全身,包帯で見付かったらしいじゃないですか.」

おぉ?

「今さ.

気合入れたとこ見なかった?」

「見てませんよ.」

「音は聞こえたでしょ?」

「聞く気が無かったので.」

「聞く気が無い子は聞かないよね.」

笑いながら視線を向ける.


「白衣なんてさ.

気分でしょ?」

「ジャージも無いですよ.

学校名入ってんじゃないんすか?」

「しっつれいな…

おっしゃれなロゴ見えない?」

「えっと…学園.

も・く・ろ・み」

「何て事言うんだよ.

そんなロゴ入ってないよ.」

「冗談ですよ.」

はぁ…

「こちらの方,見て気合入らない?」

「あぁすみません.

今来たばかりで.」

今来たばかりで情報は入ってるって

何て状況だ.


「ミイラ化させて手元に置いておきたかったのでしょうかね.

美しく見えますね.土気色で.」

「もう聞かないよ.」

「独り言ですよ.

聞く気が無さそうな子に見えました.」

あっそう.

臓物全部入れたままで,それは無い.

それは出来ない.

こんな高温多湿な場所で.

全てが腐り落ちる.

「助手ー

手袋ー.」

「はい.」

「優秀.

黙って動けば1000点満点.」

「オジサンの思考ですよ.

クソ高いロボットを揃えたら良いでしょう?」

「手袋くらい誰だって渡せるんだよ.

い・や・みだ.」

分からんか.

「はいっプラグ.」

「まだっ!」

手袋着けてないのに渡そうとしやがる.

「人間は新しい体験が必要らしいですよ.」

「…今じゃねーよ.」

「汗ですか?」

「言われた事だけ動いてくれよ頼む.

ロボットより悪いじゃないか.」


以前は頭蓋骨を砕いて接続していた.

今は鼻からスルスル入れていく.

海馬まで到達させて,最期を覗く.

急がないとストレスな情報は消されて分からなくなる.

分からなくなる前に.

全ての情報を引き出して,然るべき幕引きへ.


パンと手と手を合わせて

擦り合わせる.

「さぁ訊いてみよっか.」

気合を入れる.



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さぁ訊いてみよっか. 食連星 @kakumi

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