マオは幸せです
「ねーマオちゃんってさ、男の子?女の子?」
「マオにせいべつはありません。ロサセアエはりょうせい花です」
「そうなんだ」
「上手に一しゅるいの花だけさかせられれば、みもつきます」
「ん?」
マオと誠の会話を流し聞いていた譲だったが、妙な言い回しに顔を上げた。
「ロサセアエはバラかのしょくぶつの花をランダムにさかせます。なにがさくかは、ロサセアエの気ぶんによります」
「へーすごーい!お得~」
「おんどや日しょうじかんが足りていればきせつもといません。えいようが足りていればいつでもさきます」
お得で済ませていい話ではない。
「今更だけどおまえコレ何処で買った?」
「購入履歴見ないと解んない」
「いや見ろよ」
「え~~いいじゃん可愛くてお得なんだから~」
ぼやきつつもスマホを操作する。
「えーっと、店名は『未来科学技術館』…製造元が…『帝国総合科学研究所』?ってトコ」
怪しさが極まっている。
「植物じゃないのか?」
「ロサセアエはかいりょうされたしょくぶつです」
遺伝子操作による品種改良はここまで進んでいたか、と大人しく納得など出来るわけがない。が、詳しいわけでもない譲はそのモヤモヤを飲み込んだ。とにかく、科学技術の粋だというならそういう事にしておいた方が自分の精神衛生上安全だ。
そんな経緯で、譲は謎の最新植物ロサセアエとその育成補助システム マオの世話をする事になった。
「やっほージョーさんー……あれ。居ないか」
ロサセアエ購入から数日後。遊びに来た誠は、部屋を見渡してテンションを落とした。
「マオちゃんは?」
「こんにちはマコトさん。ユズルさんはおしごとにいきました」
常に姿があるわけではないらしい。誠の呼び掛けに応じてマオはロサセアエの影からスッと現れた。その髪には、先日咲いたヤマブキに加えバラが二輪咲いている。
「どう?マオちゃん。ジョーさんちゃんと世話できてる?」
「はい。浄水を与えてくれますし、栄養剤も用意してくれました。陽当たりも気にしてくれます。問題ありません」
──あ、思ったより可愛がってる。
「そっかぁ。良かったねぇ」
「はい。マオはしあわせです」
「うんうん。顔に似合わず面倒見いいんだよね」
母親が多忙の為、誠の面倒もほぼ譲がみてきた。誠にとっては父親のような存在だ。一度口にしたら「せめて兄にしとけ」と嫌がられた。
「あたしはずっと一緒にはいられないからさー。マオちゃん、宜しくね」
「?」
よく解らないまま、マオは「はい!」と頷いた。
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