3:可愛さ振りまく新隊員
センベンテルン軍・ミッドスケア詰所内。
5人はそれぞれ椅子に座っていた。
「さて、それじゃあアルヴァ隊に新人が入りましたーぱちぱちぱちー。」
そう言って切り出したのは無精ひげに癖の強い蒼黒い髪をした、隊長と呼ばれていた男だった。
「隊長、まずは自己紹介から始めましょうよ。流石に新人が可哀そうっす。」
言ったのはミスティを除いた唯一の女性軍人だった。
「おー、そうだな。まずは俺、アルヴァ・セクター隊長だ。まぁ、隊長って呼んでくれりゃあいいさ。」
隊長は先ほどまでと違い、灰色の、周囲の軍人と同じ軍服に身を包んでいた。
「自分はアルヴァ・トリー、戦闘員っす!よろしくっす!」
赤毛の少女、いいや、意外に歳は30代前半に見える女が言った。
胸や尻の肉付きがよく、服の上からでもその体のラインがはっきりとわかるほどだった。
「むぅ。アルヴァ・レート。役職は運搬員、主な仕事は道具の運搬と戦闘員たちのフォローだから基本的に一緒に行動する。」
一見するとデブ、と呼べるほどに大柄な体はしっかりと筋肉が詰まっているのが態度でわかる。
相撲取りのような体格だが、これだけの体から出る力は相当なものなのがわかる。
茶髪で髪が細いのも相まってカツラを乗せているようにも見える。
「ほら、ベンディ。お前も挨拶くらいはしておけ。」
隊長に促され、くすんだ金髪の、痩せ型でかなり高い身長の男は仕方ないといった様子で話した。
「アルヴァ・ベンディ。役職は連絡兼斥候。基本的に戦闘員と作戦中に顔を合わせることは無いから覚えなくてもいいぜぇー。」
「むぅ。でも賭け事をするときは大体いるから興味があったら覚えておけばいい。」
自己紹介を終えた4人はミスティに注目する。
シャワーを浴びたいと言ったミスティはまだ少し湯気が立っており、鼻腔をくすぐる程度の甘い香りが漂っていた。
――キィィィィィィンン!
「私は今日からアルヴァ隊に入ったラビット・ミスティです!あ!アルヴァ・ミスティの方がいいのかな?みんな仲良くしてね!」
「むぅ。こんなに可愛い女の子がうちに来るのはもったいない気もするが。」
「まぁ、いいだろ。大事なのは強さだからなぁー。可愛いだけじゃあないだろうし。……な?」
「初めての後輩っす!しかも可愛い!」
「はぁ。レート、トリー。お前らさっそくこの女の『先天魔法』に振り回されてんじゃねえよ。」
セクター隊長はそう言ってミスティを値踏みするような瞳で見つめていた。
「……何のことですか?私には何を言ってるのかわからないんですけど?」
――キィィィィィィンン!
「さっきから何度か使ってるよな?でもわかってねえみたいだから教えてやる。お前のそれは万能な魔法じゃねえよ。」
――キィィィィィィンン!
「隊長何言ってるんすか?魔法なんて使ってるんすか?」
「むぅ。初対面のわりにかなり好印象に感じているのが魔法か?」
「これ、ぶっちゃけ軍より娼婦にでもなったほうがいいんじゃねえー?」
「おいおい、選任騎士にその言い草はまずいぞベンディ。」
トン、と机を軽く叩いて立ち上がったセクター隊長はミスティの肩へ手を置くと、耳元で言った。
「この部隊にお前のそれはほとんど通用しねえぞ?」
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