7:旅立ちの朝に

陽光の差し込むベッドで、ミスティは目覚めていた。


「……。」


その手に取り、見つめているのは銀のメダリオン。

ウサギの紋章の描かれたそれは選任騎士の証でもある。


「あ、そうだ。ママのお墓作らなきゃ。」


トテトテと外へ出て小さな庭の片隅に穴を掘る。


「焼くんだっけ?いいや、土葬でも問題ないでしょ。」


それはまるで、家の前で死んでいた猫を埋めるかのような表情だった。


――ザッ


「パン屋、閉めないとなぁ。」


――ザッ


「あっ!配達先には早く伝えないと困るか。」


――ザッ


少しずつ、土をかけられ姿を隠していくその死体はやがて完全に埋まる。


「じゃあさっさと埋めて準備しなきゃ!」


拳大の石を一つ、埋めた場所に置いて店内へ駆け込み、水を浴びる。


「フンフンフーン、フッフッフフーン!」


この時間は好きだ。

体を綺麗にするこの気持ちよさ。

体を手入れして、綺麗にするこの作業が好きだ。

そのまま髪をタオルで綺麗に拭き上げ、櫛を通していく。


「枝毛枝毛……本当に多いなあ。」


可愛らしい服を選んで鏡の前で何度もポーズをとる。


「うん!可愛い。」


自分が可愛くなったのを確認すると、いつも配達している家へ順番に挨拶をしに行く。


――ガチャ


「あ!そうだ!」


銀のメダリオンを首から掛ける。

このまま、挨拶を終えたら軍に行こう。


「そうだよ、それがいい!」


選任騎士である以上、軍の人間も自分を無下にはできない。

そして持ち前のこの“可愛さ”!


「そうすればもっと自由になれる!」


そうだ、アタシはこの“可愛さ”で。

世界中にこの“可愛さ”を。


「そうすれば、“世界で一番可愛い女の子”になれる!」


(そうだよ、アタシはそこまでやってやっと、前世にケリを付けられる!)


「待ってな、世界!」


(これでやっと、自由に生きていける!)


「アタシが、“世界で一番可愛い女の子”!」


(そう、それこそがアタシ!)


「ミスティだ!」

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