5:先天魔法
薄暗い店内で相対する二人。
「とんだハズレくじだぜ……オーナーにはボーナス出してもらわないとな。」
「もうアタシを殺した後の話かよ?都合のいい頭してんなお前。」
ハーベンブルックは殺意を持って睨みつけるミスティに対し、何でもないかのように語り始めた。
「そりゃそうだろ。……あぁ、お前平民だもんな。知らなくても仕方ねぇか。ほれ。」
そう言ってハーベンブルックは胸元からネズミの紋章が刻まれたメダルを見せつけるように掲げた。
「メダリオン。12貴席の持つ金のメダリオンと、12貴席が選んだ選任騎士、あとは一部の軍人に与えられるこいつは“魔法”の才能を引き出す道具なんだよ!」
「……それで?魔法の才能を引き上げたって、テメェの方が強いって決まってねえだろ?」
「ハッハァ!これだから“無知”ってのは罪だよなぁ!?」
「アァ?」
「人間の使う魔法には二種類存在する!個人に付随した特殊な魔法である『先天魔法』!そしてもう一つはメダリオンを使用することで初めて使える『開発魔法』!」
「開発魔法?」
「そうだ、個人の資質に左右されるうえに戦闘において使い物にならないことも多い『先天魔法』と違い、開発魔法は“戦闘のための魔法”だ!」
「だから何だってんだよ!」
――キィィィィィィンン!
ミスティを見つめるハーベンブルックはまた、頭にノイズが走る感覚に陥る。
「可愛いなあ、お前。ある意味愛玩動物としての才能あるぜ?ベッドに連れ込んじま……チッ!」
「テメェさっきから気持ちわりぃこと言いやがって!」
「……お前が言わせてんだろうが!気持ちわりぃ魔法使いやがって!だが、お前の『先天魔法』がこの気持ちわりぃ魔法ならお前は結局、小娘にすぎねえ!」
ズンズンとミスティに近づいていくハーベンブルックにミスティはナイフを突き立てる。
――ペキィン!
しかし突き立てたナイフは一瞬撓み、甲高い金属音と共に折れてしまった。
「な!?」
「開発魔法は戦うための魔法だって言ったろう?体を鋼鉄のように固くすることも、素手で鉄の扉を破壊出来たりする魔法も含まれているんだよ!」
――ダァン!
ミスティの小柄な体が浮き上がり、壁に叩き付けられる。
ハーベンブルックの右手はミスティの首を片手で締めあげており、段々とミスティの肌が真っ赤に染まっていく。
「お前の『先天魔法』が他人を誘惑するものだってわかった以上、『開発魔法』のないお前は俺のこの守られた体に傷をつける手段がねえとわかった。」
(まずい、意識が……!)
どんどん思考に霞がかかっていく。
「だからこうして余裕をもって殺せるってわけだ。馬鹿で無知な小娘のガキ一人、なんで気合入れて殺さないといけない?」
もはや、ハーベンブルックの声も聞こえない。
こうしてミスティの意識は闇に堕ちた。
「ごきげんよう、いい夜ね?」
そして、それと同時に店内に黒いドレスの女が入ってきたのだった。
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