第15話 学校
*
一方その頃。
「はっくしょん!」
オレはあれから数日かけて新幹線を使い、山を越え、そして海を越えて、本州から北海道にたどり着き、札幌に到着し今に至る。
現在の札幌市の様子は形容するならば、旧日本首都である「東京」の雰囲気に似ているといえるだろう。
そもそも北日本国の首都は東京から札幌へと変化しているのだから、それも当然と言える。
「ここが今から通う高校になるのか……」
立ち止まりとある校門の目の前で学校を見上げているところだった。
校門には「札幌国立秀成高等学校」と刻み込まれた表札がある。
三四月らしく周りには春風に乗った桜の花びらが舞い、春を感じる景色が広がっていた。
オレは軽く気持ちを整えておく。
そのときだった。
ドンっと、急に後ろから衝突……を食らいそうになったので、オレは素早くそこから離れ、走って迫ってきた人物をかわす。
咄嗟に振り向き、後方を確認するが—————。
「あっ――――きゃ!」
そこにいたのは………ただの女子生徒だった。
着ていたブレザーの制服から、この学校の生徒のものだろうと判断できた。
どうやら急いでいたようで、前方不注意になりオレと衝突しそうになった、というわけらしい。
彼女はそのままバランスを崩し、その場に倒れそうになる。
「おっとっと! やばっ!」
無視することもできるが、彼女をかわしたのは他でもないオレだからな。
オレは素早く左手を伸ばし彼女の体を片手で支える。
「えっ」
どうやら彼女は自分の今の状態が理解できず、困惑するとともにオレが支えていることに驚いているようだ。
彼女は眼鏡をかけており、ポニーテールといわれる髪型を模していた。顔立ちも整っているし、顔つきも凛々しい感じといった普通の一般女子生徒だ。
瞳を青めて浄眼で見るがマナも少ない、本当に普通の女子。
「大丈夫か?」
それだけ問う。
「もしかして……王子……? あ、いや、いえ、あ、はい。大丈夫です。それより、ごめんなさい! 今、ものすごく急いでて、ぶつかりそうになってしまって………あ、そういえばあたし急いでるんだった!」
ぶつかりそうになったのは分かるが……王子?
彼女は自分で話しながら急いでることに気付き、しっかりオレに深々と頭を下げた後に、そのまま駆け足でどこかへ向かった。
「王子って何!? あたし何言ってんだろう……BLの読みすぎだ……」
なんだったんだ、あれは。
彼女は通常のリュックの他にも大きめのスポーツバッグを肩にぶら下げていた。おそらく運動系の部活か何かだろうと思われるが、オレには関係のない話だ。
「それにしても、王子……か」
悪くない響きだ。
何故だか分からないがオレはこの「王子」という響きに魅入られた。
何となく変な男子と周りに思われたくないので、そのまま進んで学校へ入った。
オレはこの時すでに、歯車を狂わせていた――――。
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