第11話 雷の加護
*
「そろそろくたばってくれませんか。私、こんなところで死ぬわけにはいかないんです」
私は、紫の電撃防御を盾に三体の影人を相手にし、一切の遅れを取ることなく戦う。
私の持っているこの『
別名『
私の一族である雷電家の人間が持つ単純な電気性質の異能も当然のように使えるのだけれど、『
生まれてから電気による絶対的な守護を受け続けてきた私は、人から守られたという経験がなかった。
雷電体と呼ばれる赤紫の電気が危険物から私を守ってくれるという簡易的で、とても分かりやすい能力。
この生まれつきの性質により、小さい頃、まだ私がこの加護を制御できていなかった頃、私は近づく沢山の知り合いをその電流で傷付けた。近所の方々、先生、友達、母。
悪意のない隣人の握手も、手を繋ごうとしてくれた友達も、頭を撫でようとしてくれた先生も、抱き付こうとしてきた母も。
全部全部、私の『雷の加護』が傷付けた。
悪霊の電流。悪魔の電気。
私は力強い眼力を持って前を見据える。
「本当にそろそろ
目の前の影人達は私の電気による攻撃を受けても、その損傷部分が発光しながら再生していく。
恐ろしい部分は「治癒」ではなく「再生」と呼ばれていること。
まるで攻撃が効かないように感じてしまいます。
先ほど正面から胸部を貫通した若い男性型の影人も今は何事もなかったように傷が消え、完全に再生していた。
これじゃあ、キリがない……。話と全然違うじゃない。
私の実力ならもっと簡単に倒せるって聞いていたのに……せっちゃんのウソつき!
チューニレイダーが直ったら、絶対に文句を言いますからね。
私は腕時計を見る。
「まずい……。すでに戦闘に入って、かなりの時間が経っている」
一か八か。私は右手にビリビリと鳴る電流を集める。手は電気に溢れた放電状態となる。
すると決着を早めに付けたほうがいいと考えたのか、私から見て右側にいた影人が攻撃を仕掛けて来る。
「そういうのを早とちりって言うんですよ!」
私はその攻撃をうまくスライドしてかわし、カウンターとして電気にまみれた手刀を彼の体に素早く突き刺す。
先ほどと同様、赤い血が吹き出るが……今度はさっきよりも手ごたえを感じる。
パキンッ!
何かの金属が割れるような音と酷似した破壊音が鳴る。
影人の体は、野球ボールくらいの手のひらサイズの謎の
「まずは一体……」
残り二体(もしくは……二人?)の影人も私に向かってくる。
せっかく一体は仕留め切れたのに。休ませては、くれないようですね。
それぞれが私の背中と左腕付近に触れようとし、二体とも再び私の加護の電撃を受ける。
「あなた達には知性というものがないのですか?」
彼らは先ほどから何度も何度もこの『
数多くの部位をそれぞれ二体が交互または同時に攻めてくる。
もちろんダメージは入りません。相変わらず紫の電撃が私を影人から守るってくれるからです。
『
「そろそろ、終わりにしましょう。ちょうど、あなたたちの同じような攻撃にも飽きてきたところです。しつこい男は嫌われますよ」
影人達に向かって言う。
そんな時。
「えっ―――――――?」
今のは―――――!?
ビュンと、目に見えない速度で私に切りかかる。
バチンッ!!
今までと同様に強烈な加護の電撃が入る。だが、さっきの電圧より数段威力が増している。
先程の彼らのナイフによる斬り込みと比べて数倍の速度があったが、この攻撃はどうやら影人のうちの一人が行ったようです。私の動体視力ではもはや追いつけない速度でした。
「『
この時の私は少し、いいえ、かなり焦っていました。
私は大きめの電気を全身に纏い、それを一気に放出させる術式を組む。
『
固有のマナ制御下にある二種類の電子パターン、その反粒子による対消滅。電子、反電子のマナ電荷同士でそれぞれを衝突させ、できた紫のガンマ線電撃を放出する。
紫電術式――――――「
「これでも食らってください!!」
瞬間、辺りは私が繰り出した電気状プラズマ拡散により、放電爆発を起こす。
激しいエネルギー音とアーク放電。紫電の発散が限界を突破する。
雷が落ちたような轟音と共に衝撃が伝わり、煙だらけになる。
キィィィーーーーン。
頭の中がグラグラ動くような感覚と共に、容赦ない耳鳴りがする。
少し電圧を高くしすぎた……?
「まっずい、ですね。これは……」
私は体を支えるだけの方向感覚と意識を失い、その場で片膝を床に付けて座り込む。
力を振り絞って腕時計を見る。
「なるほど、時間切れ……ですか」
その時、正面でカタンと物音がする。
あの術式じゃ影人は倒せなかったのね。かなり強い一撃をお見舞いしてあげたというのに……。
いや、待って!?
そうじゃない。
私は顔をあげて正面を見る――――――。
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