第9話 「奴ら」
*
ドンと、走って向かっている方角から大きな爆発音が聞こえる。
立ち止まり、慌てて耳を塞ぐ仕草をする。
「K、大丈夫か?」
『……んんっ。今の音なに? 鼓膜破れそうだったんだけれど』
「さあ、分からない」
正面の煙の立ち込める方を向く。
『何かの爆発音?』
「のようだな。前方方向数百メートル辺りだ」
どうも嫌な予感しかしないが、オレはあの煙の立つ場所に行って状況を確認する必要があると判断した。
意味もなく装着している紺色無地のマフラーを触り、思考する。
行くしかない……か。
オレは再び走り出す。
『まさか……鈴音さんが関係している?』
「さあな。確認しに行くまであの爆発の正体が何かは分からない」
『もしかしてそこへ向かう気?』
「当たり前だ」
オレは即答する。
『そう、私が止めてもどうせ行くんでしょう?』
「ああ」
『好きにしなよ』
彼女は呆れたと、オレを突き放すと思っていたが、そうでもないようだ。
「K、チューニレイダーの使用制限時間は後どれくらいだ?」
『今の時間帯なら早くて25分、長くて40分くらいだと思う』
神経に接続するチューニレイダーは、時間帯によって最大稼働率が異なる副交感神経が大きく関係しているため、その時間帯によっては最大使用時間が異なる。
「了解した。ちなみに電気系魔素とオレの相対距離は縮まっているのか?」
要はこの相対距離が縮まっていれば、雷電の正体に近づいていることになるが。
『うん――縮まってる』
*(鈴音)
私は数分前に爆発した現場に丁度今到着した。
辺りは工事現場のようで崩された材木や鉄筋、コンクリートなどが山積みになっていた。
その近くにはクレーン車などもあり、どうやら今日も工事は続いていたようだった。
私は足音が鳴らないようゆっくりとその工事現場へと侵入する。
まだ煙が完全には晴れていないので、辺りは微かに煙っぽいです。
「うっ……っん……」
解体作業をしているすぐ目の前の建物付近で男性のうなり声が聞こえる。
私は走って、その声の聞こえた方向に向かう。
男性が倒れた状態で伸びて悶えていた。
「大丈夫ですか? どこか怪我はありませんか?」
私は屈み、この人の様子を観察するが、見た感じ外傷はない。
「……だ、大丈夫だ……。それより人が、まだ中に……」
彼は倒壊しかけている建物を指差す。
「はっ! 中にまだ人が!?」
私は軽く彼に応急処置を施し、その場を離れる。
気配のような曖昧な認識として「マナの残影」を確認できるため、謎の爆発は「異能士」の仕業だと考えられますが……。
この「異能士」とは、異能を使用し「奴ら」を討伐することで、それらを
特に。
名瀬家は空間を制御する『
伏見家はエネルギーを操作する『
三宮家は光現象を操る『
この強力な三つの異能を使用する家系は、北日本国のほどんどの領土である北海道の異能士世界をまとめる「異能御三家」と呼称されている。
また、この世に異能士がいることに不思議に思う人も少なくないでしょう。
IWは安寧世界。「奴ら」が存在しない、救われた世界。そんな世界で「奴ら」を討伐する職など必要なのか、と。
結論から言えば、必要不可欠な存在です。
何故ならこの世界は――――本当は「救われていない世界」ですから。
でも異能士がこんな爆発を起こすだろうか。
人類を守る存在であっても、脅かす存在にはなってはいけないはずです。
それに、このマナの残影もなんだが気味が悪く、「奴ら」に近い。
しかし「奴ら」の活動時間は基本的には夜であるはず。
今は真昼。本来なら「奴ら」が活動している訳がありません。
そんなことを考えながら慎重に建物に踏み込み、中に入る。
気配を消し、静かに中を捜索していくと、奥にたくさんの人影が倒れている状態で見つかる。
十数人がそこで倒れていました。
「これは……なんてこと」
私は急いでそれらの人達に近づいて様子を見に行ったのだけれど……。
そこには───────。
煙で明瞭に見えなかったものが近づくことで見えていく。
私は呼吸が荒くなるのを自覚する。
「はぁ、はぁ……はぁ、はぁ」
これは。これは……。どうして……!?
心臓の鼓動が早くなっていく。
私の目の前がグラグラ動いているような錯覚まで感じ始める。
これは。
これは。
一体何が……!?
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