第3話
彼女はとても綺麗な人だった、
彼女以外全てが眩むくらいに。
僕は彼女と結婚できて本当に幸せものだ。
僕が彼女と知り合ったのは9年前。
その日は雨が降っていた。
刺すような冷たい雨はそこにいる人達を
足早に帰らせる。そんな中1人駅前で
立ち尽くしている人がいた。
どうやら傘を忘れたみたいだ。
僕は迷わず傘を差し出す。
「これ、使って下さい。僕はカバンがあるので」彼女は困ったような笑顔で笑う。
その笑顔はまるで雨の中、差し込むような
陽光の様だった。「じゃあ2人で入りますか?カバンって言ってもそれ、トートバッグじゃないですか、濡れちゃいますよ?」
彼女は傘を挿し、僕に手招きをする。
既視感があった、この光景。2人で雨の中
歩き出す。
「思い出せないな」
「何がですか?」
「いや、なんでもないよ。さ、帰ろうか」
2人で歩き出す。
雨はいつの間にか小雨になっていた。
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